「続いては、表彰式および壮行会を行います。表彰される皆さんと、壮行会を受ける皆さんは、壇上にお上がりください」

アナウンスを受けて、男女六人がぞろぞろとステージ上に上がる。

全校集会では、部活動や課外活動での成績優秀者の表彰が行われ、全国大会に出場する生徒に対して応援団がエール送る、という時間が設けられていた。

私たちの住んでいるN県では、運動系で有名な高校のほとんどが私立高校だ。東高校は公立高校だから、基本的には学業が優先で、運動部員の表彰はそれほど多くない。時々、弓道部の特定の選手が全国大会に出場したり、全国的にも登録校が少ないヨット部がブロック大会に出場したりするくらいで、野球部やサッカー部、バスケットボール部などのメジャーな運動部は、良くても県大会出場止まりだ。

一方で、囲碁部や将棋部、ESS部などの文化部は全国大会の常連だ。囲碁部の生徒に至っては、全国大会でも上位に入賞しており、毎回のように表彰式と壮行会でステージ上に立ち続けている。

表彰を受ける生徒たちがステージ上で横一列に並んだ。いつも通り、明らかに文化系といったような、私と≪同じ≫香りが漂う人たちが並ぶ中で、一人だけ、ひと際存在感を放っている体育会系の男子がいた。

「それではこれから表彰式を行います。まずは、囲碁部三年生、川本(かわもと)直子(なおこ)さんです」

アナウンスを受けて、川本さんが一歩前に出て、一礼し、演台に立つ校長先生の前に出た。いつもの人だ。

「川本さんは、全国高校囲碁選手権大会女子個人の部で第三位という好成績を残されました。その栄誉を称え、表彰状と盾の授与を行います」

アナウンスがあると、どこからともなく、すげぇ、という声が漏れ出ていた。

小さくて、色白で、見た目も普通の女子高生。見た目も雰囲気も、私と≪同じ≫はずなのに、全然≪同じ≫世界にいない。彼女も遠くの世界にいる、≪あちら側≫の人だ。

校長先生から表彰状と盾を受け取ると、マイクの前に出て、彼女は挨拶をした。

「囲碁部三年の川本です。一学期の終業式では、壮行会を行っていただき、ありがとうございました。みなさんの応援のおかげで、このような成績を残すことができました。これまでたくさんの応援が、とても力になりました。ありがとうございました」

そう言って頭を下げる彼女に、全校生徒から拍手が送られる。

囲碁がどんなものなのか、まったくわからないし、やりたいとも思わないけれど、きっと難しいものなんだろう。応援を力にして、全国大会三位。物理的な汗はかかないのかもしれないけれど、彼女の頭の中は、きっと輝く汗をかいていたのかもしれない。私は自分の立ち位置に戻る川本さんに拍手を送りながら、彼女の隣にいる男子に目をやった。