『ずっと、このまま二人だけで、いれたらいいなって、思って』

彼は、いつでもまっすぐに私の目を見ながら言うから、自分の心の奥底まで見透かされてしまうんじゃないかと思って、怖かった。

無意識に、無自覚に、私の思考を停止させる。鼓動が早まる。

心臓の音が漏れ聞かれてしまいそうで、もしそうなったら、自分のほんとうの気持ちに気づかれてしまいそうで、いっそのこと、それならもう楽になれるのにな、なんて考えていた。

『続き、やりましょう』

彼は何事もなかったかのように、再びパネルに目を落として、色塗り作業を再開した。


なんにもないなら、からかわないでよ。

私は涙を拭いながら、駅に向かって歩き始めた。今度こそ、信号は青になっていた。

ピヨッ、ピヨピヨッ。

信号機の音が、今日はやけに耳に残った。