げっそりとした表情で大会一日目を迎えた。
 会場に着いたときには寝不足と、それに伴う車酔いでみんなグロッキーになっていた。
 せっかく東京に来たというのに、はしゃぐ元気すらない。
 しかしこれからも重要な闘いがある。
 見に来るお客さんと審査員にレイアウトの説明とアピール。一日一回あるステージでのプレゼンだ。
 日程を見るとステージは両日とも12時ごろ。時間を気をつけないといけない。
 いろいろ準備がなんとか終わったころ、開会式が始まった。
 今回は総勢235組が出場しているとのこと。そんな中であの発想だけで賞が獲れるか不安になる。けどベストは尽くした。後は天に祈るだけだ。
 開会式後お客さんの入場が始まった。隣に東京の鉄道の専門学校と言っても過言じゃない高校があるため、俺たちのレイアウトにはなかなか来ない。だけどそれだけの理由があるなと、お隣さんを見て思った。
 まず作りがすごすぎる。三重県の小さい電車がモデルになっていて、写真と見比べてもすごい再現度で俺らのレイアウトがしょぼく見えてしまった。
 戻ってきたらお隣さんも俺たちのレイアウトに遊びに来てくれた。
「え、すごい。この発想はないですよ!!」
 やった。鉄道好きの集まる学校と言われる人から高評価をいただいた。
 それから”板で覆ったレイアウト”に興味を示す人が増えて来た。そしてみんなびっくりして満足そうに帰っていく。
「いい反応だね」
 手ごたえを感じ始めたその時、聞きなれた声がした
「お兄ちゃん!」
 先週晴れて退院した星奈が父さん、母さんに連れられてきた。
「実里さん、菜摘さんお久しぶりです」
「久しぶり星奈ちゃん!」
「お久しぶりです」
 前回は瀬戸さんに怒られたことがあったからか今回は抱き着かなかった。
「できたんだね。鉄道模型」
「ああ」
「すごいんだよ。最後の最後にとんでもない仕掛け作ったんだよ」
「おかげで全員寝不足です」
「それは心配。今日はちゃんと寝てね」
「もちろん」
「さ、星奈。ここから覗いて」
「うん」
 レイアウトとしてはいろいろ可笑しい顔より少し大きい四角い穴の中を覗く。
「星奈、まずはこのレバーを引いて列車を動かしてみて」
「うん」
 レバーを引いたら目の前にあった列車が動き出す。
「わあ、動いた」
「じゃあ、ここからが本番だ」
 そして俺は電気のスイッチを押した。