「リボン」1


 都立青峰《あおみね》高校の制服が自分たちの代でリニューアルされるという知らせは、またたく間に生徒たちの間で広まった。

 音羽理都《おとわ りと》は最初、じゃあ高等部に上がる時にまた制服を買い直さなければいけないのか、余計な金がかかるって言ってた親の気持ちがわかる、と他人事のように感じていたが、いざ真新しくなった制服のデザインを見た瞬間、気分がぶち上がったのだった。

 配られた資料のプリントには、今までの古臭い制服から一新された、モダンな雰囲気を放つブレザー。
 胸元をひときわ際立たせている、深紅のリボンタイは、まさしく赤色が好きな理都にとってこれ以上ないほど、理想的なスタイルだった。

 本当に、美しい制服だ。
 女子だけ。
 そう、女子だけが。

 理都は、一緒に印刷されている男子の制服もチラッと見る。
 こちらも、別にダサくはない。むしろ、いい。体型がシュッとして見えるように巧く計算された、実に見事な出来だ。

 しかし、胸元は、ネクタイ。
 濃紺色の、ほぼ黒に近いネクタイだった。

 理都はそこだけいつも不満である。男子はネクタイ、女子はリボン。女子はネクタイでも変に見えなくて、男子はリボンをつけられない。なぜだ。性差の違いはどこからくるのか。

「リボンつけたい」

 理都は誰にも聞こえないように、ごく少量のボリュームでボソッとつぶやいた。

 理都は、リボンが好きだ。
 その他、ハートマークや、キラキラしたもの、小物類、雑貨類……。およそ「女の子」が好みそうな対象物を、丸ごと愛している。

 音羽理都は、男子だが、可愛いものを身に着けたい。
 誰にも言ったことはないけれど。


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