裏門を出ると、車を停車させるのにちょうどいいスペースがある。私たちはそこで母の到着を待つことにした。
どうやら教職員の駐車場が裏門付近にあるようで、勤務時間を終え、自家用車で帰宅する先生の姿を先ほどからチラホラ見かける。
「何か、目立っちゃいますね……」
申し訳なさそうに私が先輩に謝罪すると、先輩は心配そうに私を見つめている。
「そんなこと言っている場合じゃないんだから、周りのことなんて気にしないこと。それより、身体は大丈夫?」
「はい……。明日には、元気になっていると思います」
正直なところ、今はまだ呼吸も荒いし、早く帰って横になりたい。だけど、それを口にすると先輩に今以上の心配を掛けてしまいそうで、言えなかった。
裏門に到着して、二、三分経った頃だろうか。目の前に見慣れた車が停車した。
「香織! 大丈夫?」
母は邪魔にならないスペースへ車を停車させると、運転席から下りて、私たちの元へ駆け寄った。
私が口を開こうとした瞬間、先に先輩が言葉を発した。
「香織ちゃんのお母さんですか? 僕、香織ちゃんと同じ写真部の西村と言います。先ほど、香織ちゃんが過呼吸の発作を起こしたので、僕がそばにいました」
先輩の簡潔な説明に、母が驚きながらも私の容態を確認する。
「過呼吸!? 何があったの? このまま病院に行く?」
私は過去に、過呼吸の発作で病院へ運ばれたこともあり、母も過敏に反応している。
「病院は、行かなくても大丈夫。帰宅途中に、何かあったら心配だからって、先輩が……」
過呼吸の発作がぶり返さないよう、ゆっくり呼吸をしながら母に返事をする。
私の様子を見て、そこまで緊急性がないと判断した母は、ここでようやく先輩のことに気付いたようだ。
「ああ、あなたが娘のそばにいてくれたのね、ありがとう。えっと……」
「西村です」
「ああ、西村くん。ごめんなさいね、ちょっと気が動転しちゃって……」
また、母に心配を掛けてしまった……
いつも冷静な母らしくない一面に、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「いえ、大丈夫です。急に電話が掛かってきたら、びっくりしますよね。……じゃあ、香織ちゃん。今日はゆっくり休んで、また明日ね」
先輩は私たち親子を気遣うと、母に会釈をする。
私は母に促され、車の助手席に座ると、母も運転席へと戻った。シートベルトを締めると、車をゆっくりと発進させた。車のサイドミラーから、先輩が私たちを見送る姿が見える。
先輩の姿が見えなくなると、母が徐ろに口を開く。
「過呼吸の発作なんて、いつ振りかしら。本当に病院へ行かなくても大丈夫なの?」
目の前の横断歩道で、自転車通学の中学生が車の途切れるのを待っている。母は減速しながら横断歩道手前の停止線に停まると、中学生が自転車を押しながら横断する。信号のない交差点では交通事故に要注意だ。七年前、私が交通事故に遭ってから、両親ともに運転はそれまで以上に慎重になっている。
「うん、大丈夫。今日は帰ったら早く休むね」
助手席のシートにもたれると、もうこのまま動きたくなくなる。このまま眠れたら最高なんだけどな……
「宿題とか大丈夫なの? 無理しなくても、体調次第では、明日学校休んでもいいのよ」
「うん、ありがとう。その時は学校に連絡よろしくね」
母は念のためと言って、ドラッグストアに立ち寄ると、経口補水液などを購入した。
どうやら教職員の駐車場が裏門付近にあるようで、勤務時間を終え、自家用車で帰宅する先生の姿を先ほどからチラホラ見かける。
「何か、目立っちゃいますね……」
申し訳なさそうに私が先輩に謝罪すると、先輩は心配そうに私を見つめている。
「そんなこと言っている場合じゃないんだから、周りのことなんて気にしないこと。それより、身体は大丈夫?」
「はい……。明日には、元気になっていると思います」
正直なところ、今はまだ呼吸も荒いし、早く帰って横になりたい。だけど、それを口にすると先輩に今以上の心配を掛けてしまいそうで、言えなかった。
裏門に到着して、二、三分経った頃だろうか。目の前に見慣れた車が停車した。
「香織! 大丈夫?」
母は邪魔にならないスペースへ車を停車させると、運転席から下りて、私たちの元へ駆け寄った。
私が口を開こうとした瞬間、先に先輩が言葉を発した。
「香織ちゃんのお母さんですか? 僕、香織ちゃんと同じ写真部の西村と言います。先ほど、香織ちゃんが過呼吸の発作を起こしたので、僕がそばにいました」
先輩の簡潔な説明に、母が驚きながらも私の容態を確認する。
「過呼吸!? 何があったの? このまま病院に行く?」
私は過去に、過呼吸の発作で病院へ運ばれたこともあり、母も過敏に反応している。
「病院は、行かなくても大丈夫。帰宅途中に、何かあったら心配だからって、先輩が……」
過呼吸の発作がぶり返さないよう、ゆっくり呼吸をしながら母に返事をする。
私の様子を見て、そこまで緊急性がないと判断した母は、ここでようやく先輩のことに気付いたようだ。
「ああ、あなたが娘のそばにいてくれたのね、ありがとう。えっと……」
「西村です」
「ああ、西村くん。ごめんなさいね、ちょっと気が動転しちゃって……」
また、母に心配を掛けてしまった……
いつも冷静な母らしくない一面に、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「いえ、大丈夫です。急に電話が掛かってきたら、びっくりしますよね。……じゃあ、香織ちゃん。今日はゆっくり休んで、また明日ね」
先輩は私たち親子を気遣うと、母に会釈をする。
私は母に促され、車の助手席に座ると、母も運転席へと戻った。シートベルトを締めると、車をゆっくりと発進させた。車のサイドミラーから、先輩が私たちを見送る姿が見える。
先輩の姿が見えなくなると、母が徐ろに口を開く。
「過呼吸の発作なんて、いつ振りかしら。本当に病院へ行かなくても大丈夫なの?」
目の前の横断歩道で、自転車通学の中学生が車の途切れるのを待っている。母は減速しながら横断歩道手前の停止線に停まると、中学生が自転車を押しながら横断する。信号のない交差点では交通事故に要注意だ。七年前、私が交通事故に遭ってから、両親ともに運転はそれまで以上に慎重になっている。
「うん、大丈夫。今日は帰ったら早く休むね」
助手席のシートにもたれると、もうこのまま動きたくなくなる。このまま眠れたら最高なんだけどな……
「宿題とか大丈夫なの? 無理しなくても、体調次第では、明日学校休んでもいいのよ」
「うん、ありがとう。その時は学校に連絡よろしくね」
母は念のためと言って、ドラッグストアに立ち寄ると、経口補水液などを購入した。