板倉勇翔は、ともに愛を育んでいくことを、なにがあってもあきらめない女性を探していたのではないか。

 そして、ついに巡り会えた。

 最高の人生のパートナーに。

 そう信じたい。

 トウカエデの並木道をまもなく抜けようとしていた。

 目線の先で、支店ビルの窓ガラスに朝陽が反射して輝いている。

 僕はこころもち背筋を伸ばして、小春さんに告げた。

「二宮さんの幸せを、心から願ってるよ」

 ほんとうに。

 一片(いっぺん)の偽りもなく。

 さようなら、小春さん。

 幸せな時間をくれて、ありがとう。

「わたしも……林葉主任のお幸せを祈っています。いつまでも……」

 小春さんはそう言って、僕の記憶に生涯(しょうがい)残りつづけそうな、このうえなくやさしくて、かすかに(うれ)いをおびた笑顔をそっと咲かせた。





 




       【 了 】





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 f(^_^) by shunya shino