「はい、開発部 春山です」
週明けの月曜日、すずなが職場で電話をとると、耳触りの良い女性の声がした。
「総務の中島ですが、佐田課長はいらっしゃいますか?」
「佐田さん? ちょっと待って下さいね」
そういえば、今日は朝から佐田さんを見てないわ……と思いつつ、部屋の前に取り付けられたホワイトボードに目を走らせた。佐田のネームプレートと今日の日付が交差するところに有休と書かれてある。
「佐田さんは今日お休みを取られてるみたいですよ」
「えっ……そうですか。分かりました。ありがとうございます」
声に明らかな驚きが含まれていた。けれど、中島はそれ以上何かを言うことはなく、電話を切った。切った途端に、中島の声とは対極に位置していそうな甲高く甘ったるい声が耳に飛び込んできた。
「すずなさーん、お昼外で食べません? 会社の前に来てるキッチンカーのランチボックスが美味しいらしいんですよー」
すずなの後ろにデスクを構える結愛が、キャスター付きの椅子ごと寄ってきた。
社食で食べようかと思っていたけれど、とくにこだわりはない。美味しいものが食べられるならそれに越したことはない。
「いいわよ。そうしようか」
鞄から財布だけを掴むと、すずなはすっと席を立った。
週明けの月曜日、すずなが職場で電話をとると、耳触りの良い女性の声がした。
「総務の中島ですが、佐田課長はいらっしゃいますか?」
「佐田さん? ちょっと待って下さいね」
そういえば、今日は朝から佐田さんを見てないわ……と思いつつ、部屋の前に取り付けられたホワイトボードに目を走らせた。佐田のネームプレートと今日の日付が交差するところに有休と書かれてある。
「佐田さんは今日お休みを取られてるみたいですよ」
「えっ……そうですか。分かりました。ありがとうございます」
声に明らかな驚きが含まれていた。けれど、中島はそれ以上何かを言うことはなく、電話を切った。切った途端に、中島の声とは対極に位置していそうな甲高く甘ったるい声が耳に飛び込んできた。
「すずなさーん、お昼外で食べません? 会社の前に来てるキッチンカーのランチボックスが美味しいらしいんですよー」
すずなの後ろにデスクを構える結愛が、キャスター付きの椅子ごと寄ってきた。
社食で食べようかと思っていたけれど、とくにこだわりはない。美味しいものが食べられるならそれに越したことはない。
「いいわよ。そうしようか」
鞄から財布だけを掴むと、すずなはすっと席を立った。