「ねぇお兄さん。今日も真由ちゃんがアイテムいっぱい用意してくれてるだろうから、ゴーグルがあるか聞きに行こうよ」
袖を引かれ、啓介は鏡から永遠へ目線を移す。少しだけ不安そうな顔をしていて、永遠なりに啓介と快との間に流れる空気を感じ取り、気を使っているのかもしれないと思うと申し訳なくなった。
「そうね。行こうか」
永遠の頭を軽く撫でてやると、強張っていた表情が和らぐ。啓介の腕に絡みついてクスクス笑う永遠は、子猫が喉を鳴らしているようで可愛い。
「俺も行く」
更衣室を出る二人の後に、仏頂面の快も続いた。
スタジオでは順調に撮影が進んでいるようで、白いスクリーンの前でモデルたちがポーズを取っていた。何度かシャッターが切られると、スタイリストがモデルの元に寄って髪や服を整える。その様子を少し離れた場所から真由が腕を組んで見守っていた。
「真由ちゃん、ちょっといい? 今日も衣装、少しアレンジしたいんだけど」
永遠が声をかけると、真由は笑顔でそれに応える。衣装が掛ったラックに向かって歩き出し、おいでおいでと手招きした。
「いいわよ。実は今日もキミたちならやってくれるかなーって期待してたんだ。で、何が必要?」
「僕はゴツめのゴーグルと、ベストが欲しい」
「俺はファーのストール」
リクエストを聞きながら、真由が「そうねぇ」とアイテムをいくつかピックアップする。
「一応、ここにあるのは全部掲載許可はもらってるから自由に使っていいよ。ベストだとこんなのはどう? ファーは多めにあるから好きなの選んでね。ゴーグルはさすがに持ってきてないけど……あ、松永くん!」
モデルの衣装チェックを終えた松永が、「はぁい」と離れた場所から返事をした。
「松永くん、今日もバイクで来てる? キミのゴーグルカッコ良かったよね。ちょっと梅田くんに貸してくれないかな」
「ええ、構いませんよ。すぐに取ってきますね」
ありがとうございますと啓介が頭を下げると、松永は気にするなと言う風に笑って軽く手を振った。真由が腕時計をチラリと見てから「よし」とうなずく。
「そろそろキミたちもメイクしなきゃね。五分後にメイクルームに来てくれるかな。私は先に行って準備してるから」
言いながら既に歩き始めている真由は、メイクの担当者に声をかけながらメイクルームへ消えていった。残された啓介たちは、手早く目当ての品を吟味する。
「凄いよね、さすがレギュラー。私だったら提案されたコーデを変える勇気ないや」
「私も。何か余裕って感じだね」
囁くような声が聞こえ、啓介は思わず振り返った。
会議室で使うような長机とパイプ椅子が置いてあり、そこに座っていた待機中のモデルが、慌てたように目を逸らす。悪意とまでは行かないが、値踏みされているような気配は感じられた。
ぐるりと辺りを見回して、そこで初めて啓介は、自分たちが周囲から観察されていたことに気が付いた。
袖を引かれ、啓介は鏡から永遠へ目線を移す。少しだけ不安そうな顔をしていて、永遠なりに啓介と快との間に流れる空気を感じ取り、気を使っているのかもしれないと思うと申し訳なくなった。
「そうね。行こうか」
永遠の頭を軽く撫でてやると、強張っていた表情が和らぐ。啓介の腕に絡みついてクスクス笑う永遠は、子猫が喉を鳴らしているようで可愛い。
「俺も行く」
更衣室を出る二人の後に、仏頂面の快も続いた。
スタジオでは順調に撮影が進んでいるようで、白いスクリーンの前でモデルたちがポーズを取っていた。何度かシャッターが切られると、スタイリストがモデルの元に寄って髪や服を整える。その様子を少し離れた場所から真由が腕を組んで見守っていた。
「真由ちゃん、ちょっといい? 今日も衣装、少しアレンジしたいんだけど」
永遠が声をかけると、真由は笑顔でそれに応える。衣装が掛ったラックに向かって歩き出し、おいでおいでと手招きした。
「いいわよ。実は今日もキミたちならやってくれるかなーって期待してたんだ。で、何が必要?」
「僕はゴツめのゴーグルと、ベストが欲しい」
「俺はファーのストール」
リクエストを聞きながら、真由が「そうねぇ」とアイテムをいくつかピックアップする。
「一応、ここにあるのは全部掲載許可はもらってるから自由に使っていいよ。ベストだとこんなのはどう? ファーは多めにあるから好きなの選んでね。ゴーグルはさすがに持ってきてないけど……あ、松永くん!」
モデルの衣装チェックを終えた松永が、「はぁい」と離れた場所から返事をした。
「松永くん、今日もバイクで来てる? キミのゴーグルカッコ良かったよね。ちょっと梅田くんに貸してくれないかな」
「ええ、構いませんよ。すぐに取ってきますね」
ありがとうございますと啓介が頭を下げると、松永は気にするなと言う風に笑って軽く手を振った。真由が腕時計をチラリと見てから「よし」とうなずく。
「そろそろキミたちもメイクしなきゃね。五分後にメイクルームに来てくれるかな。私は先に行って準備してるから」
言いながら既に歩き始めている真由は、メイクの担当者に声をかけながらメイクルームへ消えていった。残された啓介たちは、手早く目当ての品を吟味する。
「凄いよね、さすがレギュラー。私だったら提案されたコーデを変える勇気ないや」
「私も。何か余裕って感じだね」
囁くような声が聞こえ、啓介は思わず振り返った。
会議室で使うような長机とパイプ椅子が置いてあり、そこに座っていた待機中のモデルが、慌てたように目を逸らす。悪意とまでは行かないが、値踏みされているような気配は感じられた。
ぐるりと辺りを見回して、そこで初めて啓介は、自分たちが周囲から観察されていたことに気が付いた。