昼休みが終わり、蔵人は一人で教室に向かった。
「周防!」
背後から声を掛けられて、振り返るとそこに海音寺がいた。
「なんか、俺に用っすか?」
「用がなけりゃ、声なんか掛けねえよ」
演劇部で顔を合わせた時はほとんど会話らしい会話をしたことがなく、しかも常に "ヒロイン" 扱いされていたこともあって、海音寺が "普通に" 喋ることに、蔵人はなんだか驚いてしまった。
「おまえの相棒はどうした?」
「トーマはクラスが違うから、つるんでますけど、学校内だと別行動が多いですよ?」
「そっちじゃなくて、女優の息子のキラキラとかいうヤツ」
「キサラです」
「それ! そのキラキラはどうした?」
「よくわかりません。昼メシ食ってるトコに西城って先輩が来て、何か呼び出されて行きました」
「あいつ…やっぱり余計なことを…。おい、おまえはなんで着いて行かなかったんだ?」
「着いてくんなって言われて、俺が後を追いかけないように見張りまでつけられたんで…。えっ、やっぱり西城先輩って、キサラのことを殴ろうとか、そーいうんですか?」
「いや、流石に殴ったりはしないと思うが…。いや、でも、どうかな? アイツ、頭に血が上ると見境なくなるし…」
「まずいじゃないですか!」
海音寺は少し考えてから、踵を返すと、廊下を走っていく。
その様子に、蔵人も海音寺の後を追った。
「あれ? クラちゃん、どうしたん?」
「いま、忙しい!」
廊下で冬馬とすれ違ったが、蔵人はそのまま立ち止まらなかった。
「ちょ、ちょっと、もう授業始まるよ」
「忙しいっつったろっ!」
走り去る蔵人の背を、冬馬は呆れ顔で見送った。
「周防!」
背後から声を掛けられて、振り返るとそこに海音寺がいた。
「なんか、俺に用っすか?」
「用がなけりゃ、声なんか掛けねえよ」
演劇部で顔を合わせた時はほとんど会話らしい会話をしたことがなく、しかも常に "ヒロイン" 扱いされていたこともあって、海音寺が "普通に" 喋ることに、蔵人はなんだか驚いてしまった。
「おまえの相棒はどうした?」
「トーマはクラスが違うから、つるんでますけど、学校内だと別行動が多いですよ?」
「そっちじゃなくて、女優の息子のキラキラとかいうヤツ」
「キサラです」
「それ! そのキラキラはどうした?」
「よくわかりません。昼メシ食ってるトコに西城って先輩が来て、何か呼び出されて行きました」
「あいつ…やっぱり余計なことを…。おい、おまえはなんで着いて行かなかったんだ?」
「着いてくんなって言われて、俺が後を追いかけないように見張りまでつけられたんで…。えっ、やっぱり西城先輩って、キサラのことを殴ろうとか、そーいうんですか?」
「いや、流石に殴ったりはしないと思うが…。いや、でも、どうかな? アイツ、頭に血が上ると見境なくなるし…」
「まずいじゃないですか!」
海音寺は少し考えてから、踵を返すと、廊下を走っていく。
その様子に、蔵人も海音寺の後を追った。
「あれ? クラちゃん、どうしたん?」
「いま、忙しい!」
廊下で冬馬とすれ違ったが、蔵人はそのまま立ち止まらなかった。
「ちょ、ちょっと、もう授業始まるよ」
「忙しいっつったろっ!」
走り去る蔵人の背を、冬馬は呆れ顔で見送った。