今の2年生で、二軍にいる部員は、僕以外全員辞めてしまった。いつも2人くらいは最後まで二軍に残っているものなのに。確かに、1年に優秀な部員が多かったという事もある。だが、僕1人残して行くなんて……。
 そうしてそれが、僕がマネージャーになる事を決心させた。どうしても、ここで部活を辞める気にはなれなかった。辞めて受験勉強だなんて、そんな心の準備は全く出来ていない。まだまだ野球に携わっていたかった。甲子園に行きたかった。たとえ自分が試合に出られなくても。
 僕は監督に言って、マネージャーに転身した。

 もう、女子二人の事などは無視。マネージャーとなるからには、徹底的にやることにした。
 まず、部員の管理だ。1人1人の調子を見て、気になる事があれば、管理簿に記入しておくことにした。
 今までは二軍の練習場所にいた僕だが、これからは主に一軍の練習場所にいる事になった。それまでは口も利いたことのなかった主将の角谷をはじめ、一軍のみんなとも言葉を交わすようになった。
 最初は、
「マネージャー、これお願い。」
などと言われていたのが、だんだんと、
「瀬那、これやっておいて。」
と、名前を呼んでもらえるようになった。そして、僕にも下の名前で呼んでいいと言ってくれた人がいたので、それからはみんなを下の名前で呼ぶ事にした。角谷にも、
「正継、そろそろ次のメニューの時間だよ。」
なんて、話しかけたりするようになったのだ。
 これはすごい変化だ。しかも、部活以外の教室や廊下でも、一軍のやつらと雑談を交わすようになったのだ。道男に、
「瀬那、出世したな。」
と言われるほど。決して出世したわけではないけれど。

 しかし、相変わらず戸田は僕を「マネージャー」としか呼ばない。教室では話しかけられた事もない。
 最近では、他校の女子までもが戸田を見に来ていたりする。そりゃあ、ちょとかっこいいだろうけれど、あんな無愛想なやつ、どこがいいんだか。