「宅配便です。順番に伺います」
私は回帰前も、この時間宅配便を受け取ったことを思い出した。
ちなみにこの宅配便が私の部屋に届くのは40分後だ。
届く時間も中身もわかっている宅急便のことは置いといて、鈴木さんと父との関係を洗い出しといた方がよさそうだ。
「茨城のどちら出身なのですか?」
私は1度だけ、父方の実家に行ったことがあった。
父が歩くだで、皆、誰か知っているような小さな街だった。
出身が同じだと顔見知りである可能性が高い。
「鉾田です。知らないですよね。水戸と取手の間で取手よりの場所です」
私は県庁所在地である水戸は知っているが、取手はどこか分からない。
隣県の舞ちゃんも知らないような顔をしていた。
しかし、鉾田は知っていた。
それは父の出身地だからだ。
「夏に自分の街が世界一良いところだと言いながら、子供達が山車を引くお祭りがありますよね」
私が言った言葉に鈴木さんは驚いた顔をしている。
私もこの祭りが意外と大規模なもので驚いたのだ。
日本に存在する祭りは、福岡の山笠や青森のねぶた祭りなど有名なものだけではない。
調べてみると、日本では年中どこかしらで祭りが開催されていることを知った。
日本は何でもない日万歳のお祭り大国なのだ。
その祭りというもので、町内の人が集まっているからだろうか。
鉾田という街は、町中の人が他人の家の家族構成や交友関係を知っているようだった。
「そうですよ。お菓子も配られるので、毎年参加するのが楽しみでした。うちの息子も小さい時はよく参加したんですよ」
鈴木さんが子持ちだということをはじめて知った。
そして、子持ちであるのに父と不倫をしていたということに嫌悪感が湧いてくる。
回帰前、彼女と話す時はいつも彼女の質問に私が応えているだけだった。
その尋問のようなやり取りは、あまり楽しいものではなかった。
今は、茨城の隣県出身の舞ちゃんがいるから、鈴木さんも気を許してくれているのだろう。
「お子さん、今おいくつ何ですか? ご主人も今、東京でお仕事をなさっているのですか?」
家政婦と雇い主の家というビジネス的な関係なので、プライベートの話を聞くのはルール違反だとは分かっていたが聞かずにはいられなかった。
「鈴木さんのお子さんなら可愛いでしょうね」
舞ちゃんが屈託なく鈴木さんに笑いかけている。
私の質問は舞ちゃん的には非常識ではなかったようだ。
「可愛いだなんて。もう、とっくに成人して今はシンガポールで働いています。実は私、未婚の母なんです。高校の卒業式に告白した先輩と思い出を作ったら、妊娠してしまったクチです」
鈴木さんが、とんでもないプライベートを明かしてきた。
多分、舞ちゃんの持つ聞き上手な雰囲気がそうさせている。
卒業式に思い出を作ったら妊娠しただなんて聞いたことがないが、よくあることなのだろうか。
そして、私はその先輩が父なのではないかと疑ってきた。
父は高校時代のモテ自慢として、卒業式に全てのボタンを女の子に取られたと言っていた。
母がその話を聞いてヤキモチを妬いているのを、父は面白がっていた記憶がある。
「シンガポールで働いているなんて、優秀なお子様なんですね」
私は真実を知るのが怖くて、話を鈴木さんのお子様の方にうつした。
「父親がとんでもなく優秀なんです。妊娠を告げたら、音信不通になってしまったんですけどね。息子は荒れてた時期も長かったのですが、今では独り立ちしてくれました」
私はますます鈴木さんが言う先輩というのが、父なのではないかと思ってきた。
もし、それが事実なら父は子を認知もせず、養育費も払わず逃げたということだ。
そして、そのようなプライベートで重い話を明るく言う鈴木さんが怖くなってきた。
「荒れていたって、成人式で大暴れしたりしたのですか?」
私は息子さんが荒れていたということが心配になった。
父親の不在は息子さんが荒れたことと、関係があるのではないだろうかと思った。
茨城といえば、成人式で不良が暴れたりするので有名だったはずだ。
「中学まで虐められて不登校になってましたから、成人式には出ていません。地元に帰りたくないのでしょう。どうなるかと心配しましたが、高校から他県の寮のある学校にいって持ち直しました」
私はなぜだか鈴木さんの言葉に、妙な罪悪感を覚えた。
「とんでもない優秀な遺伝子に感謝ですね」
舞ちゃんの返しに、鈴木さんが笑う。
私は鈴木さんを捨てた先輩が父である気がして、心に闇がかかってくる。
「宅配便の人、もう30分以上来ないけど、途中で何か事件に巻き込まれたんじゃ」
舞ちゃんが、タワーマンションに住んで宅配便業者に対して私がはじめに心配したことと同じ感想を持っている。
「舞ちゃん、宅配便が届くのが入り口から玄関まで30分以上かかるのが、実はタワーマンションでは普通なんだよ」
私の言葉に舞ちゃんが驚いている。
この待ち時間が嫌で、1階の宅配ボックスに入れてもらうことに途中からしたのを思い出した。
しかし、今回の荷物は宅配ボックスに入る大きさではない。
私は回帰前も、この時間宅配便を受け取ったことを思い出した。
ちなみにこの宅配便が私の部屋に届くのは40分後だ。
届く時間も中身もわかっている宅急便のことは置いといて、鈴木さんと父との関係を洗い出しといた方がよさそうだ。
「茨城のどちら出身なのですか?」
私は1度だけ、父方の実家に行ったことがあった。
父が歩くだで、皆、誰か知っているような小さな街だった。
出身が同じだと顔見知りである可能性が高い。
「鉾田です。知らないですよね。水戸と取手の間で取手よりの場所です」
私は県庁所在地である水戸は知っているが、取手はどこか分からない。
隣県の舞ちゃんも知らないような顔をしていた。
しかし、鉾田は知っていた。
それは父の出身地だからだ。
「夏に自分の街が世界一良いところだと言いながら、子供達が山車を引くお祭りがありますよね」
私が言った言葉に鈴木さんは驚いた顔をしている。
私もこの祭りが意外と大規模なもので驚いたのだ。
日本に存在する祭りは、福岡の山笠や青森のねぶた祭りなど有名なものだけではない。
調べてみると、日本では年中どこかしらで祭りが開催されていることを知った。
日本は何でもない日万歳のお祭り大国なのだ。
その祭りというもので、町内の人が集まっているからだろうか。
鉾田という街は、町中の人が他人の家の家族構成や交友関係を知っているようだった。
「そうですよ。お菓子も配られるので、毎年参加するのが楽しみでした。うちの息子も小さい時はよく参加したんですよ」
鈴木さんが子持ちだということをはじめて知った。
そして、子持ちであるのに父と不倫をしていたということに嫌悪感が湧いてくる。
回帰前、彼女と話す時はいつも彼女の質問に私が応えているだけだった。
その尋問のようなやり取りは、あまり楽しいものではなかった。
今は、茨城の隣県出身の舞ちゃんがいるから、鈴木さんも気を許してくれているのだろう。
「お子さん、今おいくつ何ですか? ご主人も今、東京でお仕事をなさっているのですか?」
家政婦と雇い主の家というビジネス的な関係なので、プライベートの話を聞くのはルール違反だとは分かっていたが聞かずにはいられなかった。
「鈴木さんのお子さんなら可愛いでしょうね」
舞ちゃんが屈託なく鈴木さんに笑いかけている。
私の質問は舞ちゃん的には非常識ではなかったようだ。
「可愛いだなんて。もう、とっくに成人して今はシンガポールで働いています。実は私、未婚の母なんです。高校の卒業式に告白した先輩と思い出を作ったら、妊娠してしまったクチです」
鈴木さんが、とんでもないプライベートを明かしてきた。
多分、舞ちゃんの持つ聞き上手な雰囲気がそうさせている。
卒業式に思い出を作ったら妊娠しただなんて聞いたことがないが、よくあることなのだろうか。
そして、私はその先輩が父なのではないかと疑ってきた。
父は高校時代のモテ自慢として、卒業式に全てのボタンを女の子に取られたと言っていた。
母がその話を聞いてヤキモチを妬いているのを、父は面白がっていた記憶がある。
「シンガポールで働いているなんて、優秀なお子様なんですね」
私は真実を知るのが怖くて、話を鈴木さんのお子様の方にうつした。
「父親がとんでもなく優秀なんです。妊娠を告げたら、音信不通になってしまったんですけどね。息子は荒れてた時期も長かったのですが、今では独り立ちしてくれました」
私はますます鈴木さんが言う先輩というのが、父なのではないかと思ってきた。
もし、それが事実なら父は子を認知もせず、養育費も払わず逃げたということだ。
そして、そのようなプライベートで重い話を明るく言う鈴木さんが怖くなってきた。
「荒れていたって、成人式で大暴れしたりしたのですか?」
私は息子さんが荒れていたということが心配になった。
父親の不在は息子さんが荒れたことと、関係があるのではないだろうかと思った。
茨城といえば、成人式で不良が暴れたりするので有名だったはずだ。
「中学まで虐められて不登校になってましたから、成人式には出ていません。地元に帰りたくないのでしょう。どうなるかと心配しましたが、高校から他県の寮のある学校にいって持ち直しました」
私はなぜだか鈴木さんの言葉に、妙な罪悪感を覚えた。
「とんでもない優秀な遺伝子に感謝ですね」
舞ちゃんの返しに、鈴木さんが笑う。
私は鈴木さんを捨てた先輩が父である気がして、心に闇がかかってくる。
「宅配便の人、もう30分以上来ないけど、途中で何か事件に巻き込まれたんじゃ」
舞ちゃんが、タワーマンションに住んで宅配便業者に対して私がはじめに心配したことと同じ感想を持っている。
「舞ちゃん、宅配便が届くのが入り口から玄関まで30分以上かかるのが、実はタワーマンションでは普通なんだよ」
私の言葉に舞ちゃんが驚いている。
この待ち時間が嫌で、1階の宅配ボックスに入れてもらうことに途中からしたのを思い出した。
しかし、今回の荷物は宅配ボックスに入る大きさではない。