「だぁーかぁーらぁー、卵は一日一人一個まで! ほら、ちゃんと冷蔵庫のここに、メモ貼ってあるでしょ?」

「えーだって、どおおおしてもお腹すいて、でもろくな食材がなくて仕方なかったんだよ」

「いやいやいや、だったら買い物くらいしてきてくれてもいいじゃん? こっちは仕事なんだし」

「私だって、ちゃんと仕事してるんだって」

「どんな?」

「“家主不在の家を守る”って仕事」


 あっけらかんとした物言いで、めちゃくちゃなことを言っているニートな彼女。
 チカッ……チカチカチカッ
 切れかけた蛍光灯がなおっていない。昨日の夜、あれだけ今日のうちになおしてくれるって言ってたのに。
 フライパンに焦げついた、卵の端くれをじっと見やる。
 食器も料理器具も洗ってくれていないなんて、いくらなんでもあんまりだ。
 はあ……もう、どうしてこんなことになってるんだろう。
 それもこれも、すべてあの日から始まった。
 時は二ヶ月前に遡る。