こういう街のディスカウントストアはねえ、二十四時間やってるのよ。夜中に行っても何でも買えるの、ありがたいわよねえ。なんてヘアターバンを付けたままのけえ子さんは、モカの横をふわふわと踊るように歩く。酔っぱらっているのか足元が危なっかしい。けれど、周りの通行人は気にも留めていない様子だ。危ないやつには近寄らない方がいいと思っているのか、本当に気にしていないのか。どっちにしても、ふらふら歩く派手めな女性と、制服姿の女子高生。目立つかと思えば、この街ではそうでもないらしい。
「さてモカちゃんの疑問に答えていきましょうか。まずあたしの超能力についてはどう? 受け止められてる?」
 酔っているにしては、的確な質問だ。
「受け止められてないです。そんなの現実にあるなんて信じられない」
「だよねえ。だけど、実際学校の屋上から落ちちゃった」
「飛び降りた」
「飛び降りたモカちゃんは怪我ひとつなくこうして生きている。凄いスピードで落下してくる人間の身体なんて、大の男でも受け止めきれるものじゃないわ。説明出来ない力でも働かない限り、ね」
「……はい」
「次に、なぜ自殺しかけていたモカちゃんを助けたか。よね」
「はい。わたしは助けてなんて欲しくなかったですましてやパンツ……なんて」
「あれはまあ交換条件の材料ってことで。モカちゃん、隙が多そうだから言うこと聞いてくれるかなって思ったの」
「隙……っ」
「うん、ちょろいっていうか」
「ちょろ……っ」
「モカちゃん、お母さんに支配される毎日から逃げたくなったんじゃない」
「どうしてそれ……、やっぱりわたしの心を読んだんですか?」
「だから読んでないって。制服のスカートにアイロン掛けするお母さんのこと、あからさまに嫌そうに話してたんだもの、すぐに分かったわよ」
「うう……」
 モカは、けえ子さんの手のひらの上で転がされているような気分になる。
「あ、ほら。ディスカウントストアに着いた。まずはモカちゃんのパンツ買いましょ」
「だから、パンツって言わないで下さい!」
 はいはい、とけえ子さんは笑って受け流しながら、店内へと入って行く。モカは溜息をつきながら、その後ろ姿に従った。

「あ、これなんか可愛いんじゃない? ブラとセット」
「スケスケじゃないですか……」
「それがいいんじゃないの、あ、これは? Tバック」
「ひ、えええ! 紐……!」