「強迫性障害のひとつなんだけど、ドアノブや手すりに他人の菌が付いているって思うと、どうしても触れなくて。私のテリトリーに菌を持ち込まないでって気持ちがどんどん強くなっていったの。何もかもが汚く見えて自暴自棄になっていたところへ、けえ子さんがね」
モカも遭遇したヒュプノシスという力を使って、みづ穂さんの周りに菌から守ってくれるバリアを張ってくれたのだという。
「催眠だってことは私も分かってるんだけど、守られてるって実感出来たのが大きいかな。だいぶ気持ちが楽になって。今でも直接は触れないんだけど、こうやって外に出れるくらいにはなったの」
「でも、みづ穂さんもホステスさんなんですよね? その状態じゃ仕事にならないんじゃないんですか。だってお酒作ったり、その、お客さんにくっついたりするんでしょう?」
「そこがうちのお店の面白いところでね。お客さんも近寄らないでくれって人だとか、マイグラス持ってくる人だとかばっかりなの。類友ってやつ」
「へえ」
男の娘の倫太郎さんにも、同じようにファンが多く付いているのだという。
「倫ちゃんも、昔ボロボロになってたところをけえ子さんの超能力で助けられたんだって」
「そうなんだ」
けえ子さんの周りには、どうもワケありの人が集まってくるらしい。けえ子さんが集めたと言った方が正しいのか。モカも集められた人間だと気付いたのは、みづ穂さんの話を聞き終えてからだった。
モカ達に共通しているのは、自分の中の核になるものが自分以外の何かに脅かされたということ。彼らの奪われた核を拾って直してくれたのが、けえ子さんだ。
そういうけえ子さんは、どうなのだろう。
「モカちゃんは聞いてない? まだ会って一日だもんね」
「はい。超能力を見せてもらったくらいで、他には何も」
「そっか。えっとね、けえ子さんの本名はだれも知らないの。二十六歳だって本人は言ってる。それも本当かどうかは分からない。物心ついた時には、手を触れずにものを動かしたり念写したり出来るようになってたんだって」
──けえ子さんのお家は名家なんだって。お母さんは後妻って言うんだけど、モカちゃん分かる? そう、二番目の奥さん。けえ子さんがおかしな力を使うっていうことがお父さんの一族に知られて、とても気味悪がられたんだって。
モカも遭遇したヒュプノシスという力を使って、みづ穂さんの周りに菌から守ってくれるバリアを張ってくれたのだという。
「催眠だってことは私も分かってるんだけど、守られてるって実感出来たのが大きいかな。だいぶ気持ちが楽になって。今でも直接は触れないんだけど、こうやって外に出れるくらいにはなったの」
「でも、みづ穂さんもホステスさんなんですよね? その状態じゃ仕事にならないんじゃないんですか。だってお酒作ったり、その、お客さんにくっついたりするんでしょう?」
「そこがうちのお店の面白いところでね。お客さんも近寄らないでくれって人だとか、マイグラス持ってくる人だとかばっかりなの。類友ってやつ」
「へえ」
男の娘の倫太郎さんにも、同じようにファンが多く付いているのだという。
「倫ちゃんも、昔ボロボロになってたところをけえ子さんの超能力で助けられたんだって」
「そうなんだ」
けえ子さんの周りには、どうもワケありの人が集まってくるらしい。けえ子さんが集めたと言った方が正しいのか。モカも集められた人間だと気付いたのは、みづ穂さんの話を聞き終えてからだった。
モカ達に共通しているのは、自分の中の核になるものが自分以外の何かに脅かされたということ。彼らの奪われた核を拾って直してくれたのが、けえ子さんだ。
そういうけえ子さんは、どうなのだろう。
「モカちゃんは聞いてない? まだ会って一日だもんね」
「はい。超能力を見せてもらったくらいで、他には何も」
「そっか。えっとね、けえ子さんの本名はだれも知らないの。二十六歳だって本人は言ってる。それも本当かどうかは分からない。物心ついた時には、手を触れずにものを動かしたり念写したり出来るようになってたんだって」
──けえ子さんのお家は名家なんだって。お母さんは後妻って言うんだけど、モカちゃん分かる? そう、二番目の奥さん。けえ子さんがおかしな力を使うっていうことがお父さんの一族に知られて、とても気味悪がられたんだって。