6月のある日の午前5時半
少し早い朝に目覚め、あくびも目をこすることもせずに、パジャマ姿のまま階段を降り、リビングへ向かう。
そして朝食を選ぶべく冷蔵庫に行き、その戸を開ける。
「あ、何もないや。まぁ、買いに行けばいいか」
そう言い冷蔵庫を閉め、朝食をとらずに服に着替える。
彼女は一応学生であるが、着替える服は制服ではなく、私服である。
彼女のお気に入り(というよりは新しいものを買うのが面倒で同じものをよく着ているだけである)フードと紐とポケットが白い黒のパーカーを着て、黒いスカートを履いた。
次には洗面所で顔を洗う。普通は着替える前にやるような気がしなくもないが、彼女はそんなことは気にしてはいない。
化粧はしない。髪は結わずに梳かすだけ。彼女にはおしゃれという概念がないのだろうか。
必要最低限の現金と貴重品のみを持って、家を出る。
「行ってきまーす」
誰もいない家に向かってそう大声で言い、歩きだす。
ここから、この少し不思議な少女、髙木心菜(たかぎここな)の日常が始まっていくのである。