「彼女に謝りたい気持ちはあります。きちんと直接謝りたい。でも仲直りをしたいと思うには少し難しいほど、私も彼女の言動に傷つきました。この表現が正しいのかがわかりませんが、彼女が私を許せないのと同じように、私も彼女を今は許せない気持ちがあります」
全て自分が悪いのだと思っていた。
自分が悪いことをしたから、自分に悪いことが跳ね返ってくるのは当たり前なのだと。
彼女や佳奈美の行動を責める権利はないのだと。
でも、この世界に来て、自分のことを大切に思ってくれている人に出会った。
自分のことを「優しい」と思ってくれる人に出会った。
自分にもいいところがあるのだと認めてくれる人に出会って、なんでもかんでも自分のせいにして自分を責めるのはやめようと思えた。
少し烏滸がましいかもしれないけれど、自分を必要以上に卑下し続けることは、自分に厚意を持ってくれる友人たちに失礼だと思った。
私の言葉に鈴木さんはゆっくり頷いた。私の気持ちを受け止め、「わかるよ」と言うように。
鈴木さんは手に持っていた炭酸水が入ったペットボトルを口に運ぶと、一口だけ飲んだ。
「泉本さんは、きっと元の世界に戻っても、良い人間関係を築けるでしょうね」
”元の世界”という言葉が引っかかる。
「……鈴木さんは反対ですか?」
鈴木さんは私の気持ちを知っているはずで、知った上でどうして”元の世界”を勧めるのか。
彼からはっきり”元の世界で過ごす方が良い”と言われたことはない。
けれど、私がこちらの世界に残りたいと思っている気持ちを示した時から、鈴木さんが快く思っていないことは十分に伝わっている。
「初めて出会った時、鈴木さんは『こちらの世界に移住できる』と教えてくれました。それなのにどうして、今は」
スマートフォンの着信音が鳴る。
鈴木さんは部屋の中を見ると、「すみません」と一言だけ残し、ベランダを去る。
間の良さに安心したようなあの表情だと、きっとこのままベランダで待っていても、彼は戻ってこないだろう。
答えをもらえなかった問いを抱えたままもう一度星を見て、少しだけため息をついて、私も部屋に戻った。
