「席替えをしてから、友梨ちゃんと高橋くん、よく話しているでしょ。そんな二人を見たら、なんとも言えない気持ちになるの。上手く言えないんだけど、悲しいような、ちょっとイライラするような……きっと友梨ちゃんに嫉妬していたんだと思う」
もう認めざるを得なかった。
私は、高橋くんが好きだということを。
人間としてだけではなくて、異性として。
千枝は、ずっと私に、今感じているような気持ちを抱いていたのだろうか。
悪口を言うことは間違っている。私は彼女たちから受けた行動はイジメだと思っているし、イジメられたことを許そうと思う気持ちは微塵もない。
ただ、今なら、以前よりも理解できる気がした。
大きく膨らんだこの気持ちをどうしたらいいのかわからなくなった時、きっと私にぶつけるしかなかったのだろう。
……私が友梨ちゃんにぶつけてしまったように。
「そうだったんだ。ごめんね、気づかなくて……」
「ううん、本当に友梨ちゃんは悪くないの。勝手に私が嫉妬してただけだから」
「いや、私ね、涼音ちゃんははっきりとは言わないし否定することもあったけど、なんとなくわかっていたの。本当は高橋くんのこと好きなんだろうな、って。だから私も高橋くんと話してみたかった、って言うのもあるんだけど。ごめん、言い訳だよね」
友梨ちゃんは「でも、高橋くんとはずっと涼音ちゃんの話ばかりしているんだよ」と続けた。
「高橋くん、言ってた。彼、中学生の時に耳が聞こえなくなっちゃったんだよね? 耳が聞こえなくなってずっと真っ暗な世界で生きてきたけれど、涼音ちゃんと出会って世界が明るくなったんだ、って。涼音ちゃんと一緒に向日葵畑に行った日、忘れられないみたいだよ。長かったトンネルから抜け出したように、世界が明るくなった、って」
「そんな……」
高橋くんがそう思ってくれていることも知らなかった。
「この前も高橋くんが風邪をひいた時、涼音ちゃんが看病をしに行ってあげたでしょ。高橋くん、『こんなの初めてだ』って本当に嬉しそうだった。だからね、今週末、涼音ちゃんを遊びに誘ったでしょ? 初めて話した時から、お礼に遊びに誘いたいんだって相談されていたんだよ」
友梨ちゃんは一気に話すと、「でも」と最後に付け加えた。
「これから気をつけるね。確かに私だって、阿部くんが違う女の子とずっと話していたら嫌な気持ちになるもん。ごめん、これからは気をつけるよ。だから……仲直りしてくれる?」
「うん、私もごめんね……」
友梨ちゃんの顔がみるみる滲んでいくのを、グッと堪える。友梨ちゃんは「よかった」と笑うと、私に飛びついてきた。
「これからは嫌なことがあったら我慢せずにすぐに言ってね」と言う彼女に、こっそりと涙を拭いながら「うん」と頷く。
自分が嫌いだった。この先、何十年も生きていくと考えるだけで、怖くて仕方がなかった。
でも、本音で自分と向き合い、心から仲良くしたいと伝えてくれる人に出会えた。
それだけで、少しだけ、ほんの少しだけ、自分にも”良いところ”があるのかもしれないと思えた。
それから私たちは、笑い合ってゴミを捨てに行った。
途中、廊下で阿部くんとすれ違った。
彼は私たちを見て、かすかな微笑みを見せた。
