きみがいる、この世界で。


次の日、登校して教室に入ると、友梨ちゃんと高橋くんが顔を近づけあっているのが視界に入った。

「おはよ」

挨拶をすると、高橋くんは慌てて机の上に置いていたスマートフォンを隠した。

「何話していたの?」

あまりの勢いの良さを怪訝に思い尋ねるも、口の形で私の質問を読み取ったであろう高橋くんはブンブンと激しく首を横に振る。

友梨ちゃんの方を見ると、
「なんでもないよ。そうだ、昨日はありがとう。お父さんもハンバーグ美味しいって褒めてくれたんだ」

なんとなく、誤魔化された気がした。
友梨ちゃんの表情や仕草に不自然な点があったわけじゃないし、私が勘ぐりすぎているだけかもしれないけれど。

「そうなんだ。それならよかった。これでお弁当もバッチリだね」

自分の席に行って荷物を置き、何気なく二人の席を見る。
すると私が来る前と同じように、また肩を寄せあってスマートフォンの画面をのぞいていた。

何を話しているんだろう……。
そもそも二人は昨日まで話したことがない仲だったはずなのにな。
私、二人に何かしたかな……。

こういう時、どうしても思い出してしまう。元の世界で自分は疎まれる存在だったことを。

さっき話した時は、いつもと変わらない様子だった。
昨日だって友梨ちゃんとは一緒に料理を作ったし、高橋くんとは寝る前にたわいもない話をSNSでやりとりした。

二人に何か嫌なことをしてしまったわけではないと思うんだけどなあ……。

きっと何か二人にしか共感できない盛り上がる共通の話題があったのだろう。
……でも”共通の話題”って何?

頭の中で納得しようとしても、疑問が掠める。はあ、と頭を抱えた時、

「体調でも悪いの?」

ぶっきらぼうな声が頭上から聞こえた。

「おはよう、阿部くん」

「はよ」

阿部くんは勢いよく椅子をひいて座ると「頭、痛いのか?」とチラッと振り返った。

「ううん、大丈夫。ちょっと考え事してただけ」

「それならいいけど」

阿部くんの口調はとても素っ気なかったけれど、わざわざ体調が悪いのか聞いてくれるあたり、本当は優しい人なんだろう。