きみがいる、この世界で。


「病人に飯作れるってすごくね?」

阿部くんは身体を横に向ける。

「あ、これが、その高橋に作った飯?」

私の机の上に置かれていた友梨ちゃんのスマートフォンを指差す。

「……そう。見た目、微妙でしょ」

よく見たらだし巻き卵は、左の端が破けている。もっと早くに気づきたかった。そしたら作り直せたのにな。どうか彼が気づいていませんように、と願うけれど、この角度から写真を撮ったのなら気づいてしまっているだろう。

「そうか? 普通にすごいと思うけど。俺、石川に料理作ってもらったことないし」

「え!?!?」

いきなりの暴露(というほどのことでもないけれど、友梨ちゃんの反応はそんな感じだった)に、友梨ちゃんは「だって!」と私と阿部くんを順番にキョロキョロ見た。

「作る機会なかったじゃん!?」

「へえ、石川も料理できるんだ?」

「……ま、まあ、それなりに!?」

「じゃあ今度遊びに行く時、作ってきてよ。俺、石川のお弁当とか食べてみたい」

それだけ言い残すと、阿部くんは私たちの会話から消えて、お昼寝の続きに入った。

「……涼音ちゃん」

友梨ちゃんはグッと私に近づくと「今日か明日の放課後、空いていない?」と耳元で尋ねた。

「どっちも空いているよ」

私の答えに、友梨ちゃんは、眉間を寄せて、両手を合わせて拝む仕草を見せる。

「私でよければ」

小声で答えると、友梨ちゃんは安心したように笑みを浮かべ、ゆっくりと、そして深々と頭を下げた。