きみがいる、この世界で。


「すーずねちゃんっ」

二限目が終わり教科書を机の中に片付けていると、両肩にポンと手が乗った。

「いいなあ、この席。窓際の後ろとか最高じゃん」

「それに阿部くんの後ろだし?」

ニヤリと笑いながら振り向くと、友梨ちゃんはほんのりと頬を染めた。

「そんなこと言ってないし?」

「そっかそっか」

「あー、絶対に信じてないな?」

友梨ちゃんは、一時的に空席になっている左隣に座ると「でも涼音ちゃんもちょっとだけ私の席羨ましいんじゃない?」と面白そうに尋ねる。

「……『そんなことない』って言えないのが、なんだか悔しいね」

「素直なんだか、素直じゃないんだか」

彼女の明るい笑い声が耳に届いて、つられて私も笑ってしまう。

「そういえば友梨ちゃん、早速高橋くんと話してたね?」

「そうそう……ってめちゃくちゃ気になってるじゃん」

「たまたま視界に入っただけだもん」

「そっかそっか」

友梨ちゃんは、さっき私が彼女に放ったように、”全く信じていません”といった様子で返す。

「そうだ。そういえば涼音ちゃん、あ、」

友梨ちゃんはそこまで話すと「やっぱりなんでもない」と両手で口を押さえた。

「何?」

「なんでもないよ?」

「そんな意味深なところで切られると、すごく気になるよ?」

「だって……高橋くんに『内緒にして』って言われたんだもん」

「高橋くんに? 余計に気になるんですけど……!?」

ジトッと見つめると、友梨ちゃんは「わかったわかった」と両手をあげた。

「高橋くん、先週体調不良で学校休んでいたでしょ。涼音ちゃんが高橋くんと仲良くしていることを知っていたし、ちょっと話してみたいと思って、挨拶がてら『もう体調は大丈夫?』って聞いたの。そしたら『泉本さんがお見舞いに来てくれたおかげですっかり元気になった』って。『涼音ちゃんに会えて嬉しかったんだ、元気もらえたんだな~』って思っていたんだけどね、高橋くんが一枚の写真を見せて送ってくれたの……涼音ちゃんが、高橋くんのために作り置き?しておいたご飯」

は、恥ずかしい……。
顔に一気に熱が集まったのがわかった。きっと今耳まで真っ赤になっているだろう。

「高橋くんにね『写真撮ったのバレたら恥ずかしいから絶対言わないで』って言われてたんだけど、言っちゃった。高橋くん、すごく喜んでたよ。『本当に美味しかった』って」

嬉しい。
嬉しいけれども。
それ以上になんだかとても恥ずかしい。

「そっか」しか言えずにいると、「泉本、すげえんだな」と聞こえてきたものだから、私たちは勢いよく顔を前に向けた。