きみがいる、この世界で。

月曜日一限目のクラス時間では、席替えが行われた。
席替えは、月に一度、月曜日のこのクラス時間に行われることが恒例らしい。
私は窓際の後ろから二番目に、友梨ちゃんは廊下側から二列目の前から三番目の席になった。
ちなみに高橋くんは、私の席から見て友梨ちゃんの左隣になった。

「いいなあ、友梨ちゃん」

ポツリとつぶやいた時、「あ、”涼音ちゃん”……」と男子の声が頭上から降ってきた。

涼音ちゃん?

女友達以外に下の名前に呼ばれたことがなく、慌てて顔を上げると、

「……阿部くん?」

「おう、あ、てかごめん、俺たち話すの初めてだよな」

阿部くんは私の前の席に座った。

「席、私の前ですか?」

「そうだよ」

敬語じゃなくていいよ、という言葉に、初めて友梨ちゃんと話した時のことを思い出した。

「下の名前で呼んで悪かった。いつも石川が『涼音ちゃん、涼音ちゃん』って呼ぶから、つい」

一瞬、”石川”が誰のことを指しているのかわからなかった。
数秒経って、友梨ちゃんの名字だったことに気づく。

「今更で申し訳ないんだけど、名字って泉本で合ってるよな?」

「合ってるよ」

「よかった。本当に悪いな、元から人の名前覚えるのが得意じゃないんだ。それに『涼音ちゃん』呼びしか聞いていないからさ、不安になった」

「友梨ちゃん、私のこと阿部くんに話しているんだ?」

「話してるよ。クレープ食べに行ったとか、公園で1時間以上も話してたとか。前まで奈々の名前をよく聞いていたのに、今じゃ泉本がダントツで登場してる」

「……なんだかそれ、嬉しいかも」

「そうかあ?」

阿部くんは「どうして」と笑ったけれど、私は無性に嬉しかった。
自分の好きな友達と沢山の時間を一緒に過ごしていて、そして彼女の生活の一部に、自分が居るということが。