「陶山」
何かの話で大盛り上がりしている男子生徒たちの集団から、少し離れた位置で呼びかける。
一瞬聞こえないかな、と思ったけれど、陶山はあっさり私の存在に気づき、その集団から抜け出した。
「わりーな、昼休みに」
「別にいいけど。どうしたの、改まって」
ちょっと中庭にでも行こうぜ、という彼の言葉に頷き、教室を出る。
さりげなく教室の中を見ると、ジッと私たちを見つめる千枝が視界に入った。
……そんなに気になるなら、やっぱり断ってくれたら良かったのに。
ため息を押し殺して、陶山と一緒に階段を降りる。
「晴れたの、久しぶりだな」
「確かに。ここのところ雨が続いていたからね」
彼の言葉につられるように空を見上げると、文字通り”真っ青”な空が広がっている。
こんなにも綺麗な青空を見たのは、久しぶりだ。
彼は自販機の前で立ち止まると、「カフェオレ、好きだったよな?」と振り返った。
「買ってくれるの?」
「うん、相談料」
「別にいいのに。そんなに大変なことを相談されるわけ?」
「まあ、俺にとっては」
「私で大丈夫かなあ」
「逆に泉本にしか相談できねーよ」
陶山は自販機からペットボトル2本を取り出すと、中庭にあるベンチに座るように促した。