『忘れられたいのに忘れられないのって苦しいよね。その苦しみは俺なりに知っているつもりだから』

自己嫌悪に陥っていた私を受け止めてくれた時、高橋くんはどんな気持ちだったんだろう。
彼にどんな過去があっだんだろう。どんな過去が彼にああ言わせたんだろう。

【今、その夢を見ていたの?】

寝室は暗くて、ここから彼の表情を読み取ることはできない。
さっきと同じようにゆっくりと寝室に入ると、暗闇の中で、高橋くんは目を真っ赤にしながらゆっくりと頷いた。

【嫌だったら無視してね】

前置きをしてから伝える。

【どんな夢を見たの?】

【話してもいいの?】

【もちろんだよ。もし高橋くんが話してくれるのなら、私は知りたいよ】

本当の気持ちだった。
知りたかった。彼がどんな辛い過去を負っているか。
私の辛さに共感して支えてくれようとした彼が、どんな苦しい思いをしてきたのか。