「高橋くん!!」
慌ててお盆を置き、肩を揺する。
数回揺らすと、高橋くんはゆっくりと目をあけた。
「大丈夫?」
ぼんやりと空を見る高橋くんの頬には、また一筋の涙が伝う。
「嫌な夢でも見た?」
高橋くんはやっと私の方を見ると、かすかに目を見開いて、それから大きく息を吐いた。
「……大丈夫?」
高橋くんはベッドサイドのテーブルに置かれていたスマートホンを取ると、文字を打ち込む。
きっと私にあてたものだろう。
キッチンカウンターに置いたままだったスマートフォンを取りに行った時、まるで私が手に取るのを待っていたかのようなタイミングで届く。
【忘れたいのに忘れられない過去があるのは、辛いね……】
メッセージを読んだ瞬間、ぎゅっと心臓を強く掴まれたような気がした。