昨日写真で見た通り、向日葵畑のすぐそばには大きな芝生の広場がある。
太陽の下で子どもたちが走り回っているのを見ながら、見つけた木陰に、来る途中で買った大きめのレジャーシートを敷いて並んで座った。
ショルダーバッグからお弁当を入れた袋を取り出すと、お弁当箱の上に置いておいた保冷剤はまだ硬さを保っていた。
よかった。
今日は猛暑というほどではないけれど、きちんと保冷されていることに越したことはない。
お弁当箱の蓋を外すと、高橋くんはあんぐりと口を開けた。
【これ、全部泉本さんが作ったの?】
首を縦に振ると、高橋くんはこれでもかというほど大きく目を開いた。
【普段からよく料理するの?】
【ううん、普段は全くだよ。だから味は保証しないけれど、ごめんね】
【絶対に美味しいよ!】
まだ食べていないのに、自信満々に断言する高橋くんが面白くて、ふふっと笑う。
美味しかったらいいな。
一応全部味見をして、それなりに食べられる味には仕上げてきたつもりなんだけど。
お箸を渡した時、ふと彼の嫌いなものは入れていないかな、と疑問が頭をかすめた。
まあいいか、嫌いなものがあったら残してもらおう。
【食べてもいい?】
【もちろん、どうぞ】
高橋くんは割り箸を綺麗に割り、手を合わせる。
近くにあった唐揚げをつまむと、ゆっくりと口に運んだ。
どうかな、高橋くんの口にあえばいいんだけれど、という心配は杞憂に終わった。
高橋くんは数回噛むと、ちびっきりの笑顔を浮かべながらお箸を持っていない左手でグッドマークを作って見せてくれた。
こんな笑顔、初めてだ……。
曇りを感じさせない真っ直ぐな笑顔に、思わず私まで笑みがこぼれる。
頑張って作ってよかった。
そもそも今日、誘ってよかったな。
私も唐揚げに手を伸ばし口にいれると、側に置いているスマートフォンからメッセージの受信を知らせる音が鳴った。
【すごく美味しい。今まで食べた唐揚げの中で、一番美味しい】
【そんな、大袈裟だよ】
お世辞にしても勿体なさすぎる褒め言葉に照れてしまう。
【本当だよ】
【それならよかった。ありがとう、嬉しい】
今まで食べた中で一番ではないかもしれないけれど、きっと美味しいと思ってくれたことは本当なんだろう。
高橋くんの言葉は素直に嬉しい。