「友梨ちゃんが告白したんだ?」

「うん。高校1年生の時から好きだったんだけど、なかなか脈がなくてね。奈々にいっぱい協力してもらったんだ~」

「奈々ちゃんに?」

「そう。奈々と阿部くん、幼馴染だから仲良くてね。いっぱい頼らせてもらっちゃった」

「……不安じゃなかったの?」

「不安?」

私の言葉の意味がわからなかったようで、友梨ちゃんはポカンとした表情で問い返した。

「奈々ちゃんと阿部くん、仲良いんでしょ? 阿部くんが奈々ちゃんのこと好きじゃないのか、とか、奈々ちゃんに取られちゃうんじゃないか、とか……」

うまく言えない。
うまく言えないけれど友梨ちゃんには伝わったようで「そんなこと考えたことなかったなあ」とふわりと笑った。

「奈々から『阿部くんとは仲良いけれど恋愛感情は一切無い』って聞いていたし。阿部くんが奈々のことを好きなら仕方がないけれど……奈々に取られちゃうかも、とか、そんなのは考えたことなかったかなあ」

「そっか……」

それは友梨ちゃんが奈々ちゃんのことを信じていたからだろうか。
それとも、”親友が好きな人に取られる”とは、普通は考えないからだろうか。

「涼音ちゃん? どうしたの、急に難しい顔して」

「あ、ごめん、何もない。ごめんね、変なこと聞いちゃって」

「ううん、あ、見て、この前の土曜日、初めてデートしてきたの」

友梨ちゃんはスマートフォンの画面に指を走らせ、一枚の画像を表示させる。
そこには、向日葵畑をバックにして、二人が肩を寄せ合いながら写っていた。わずかな距離が初々しさを感じさせる。