きみがいる、この世界で。


彼女の言葉通り、今日の九重壁は息をのむほど素晴らしかった。
冬の澄み切った青空の下をそのままうつした太平洋は、冬にしては珍しいほど穏やかで、朝日を浴びて宝石を散りばめたように輝いている。
目を瞑って、朝日を全身に浴びるように天を仰ぎながら両手を上げる。少しだけ開いた目には、感動してしまうほど鮮やかな青空がうつった。


5ヶ月、かかった。
決心をするまで、5ヶ月、かかった。


あの世界から帰ってきた日、私はこの世界を捨てて、あちらの世界へ戻りたいと鈴木さんに願った。

あの時は、その決断に後悔しないと思っていた。
だって、会いたかった。どうしても会いたかった。そばにいたかった。いつでもそばにいて欲しかった。

「会いに来る」真剣な目で約束をしてくれた彼に。

でも。

そっと、リングに触れる。

あの時決めていたら、きっと鈴木さんが言うように、後悔していたかもしれない。
これからも続いていく自分の未来を、そう簡単に決めていいものではなかったはずだから。
けれど、きっとこれだけ考え抜いて決めたのなら、私はこの決断に後悔はしないだろう。
あちらの世界へ行って、苦しいことがあっても、たとえ高橋くんに会えなくても、それでもきっと今の自分の決断を受け止められる。


「決めたんですね」


急に背後からかけられた声に、私は驚いて振り向く。そこには予想もしていない人物が立っていたから、なおさら私は驚いてしまった。