きみがいる、この世界で。

「陶山の気持ち、今まで気づかなくてごめんなさい。あの、私……好きな人がいるの」

言う必要があるのかわからないけれど、それでも、自分に正面からぶつかってきてくれた彼には、私も本当の気持ちを伝えたかった。
私の告白に陶山はかすかに顔を顰めた。
でもそれはほんの一瞬で、彼は普段と変わらず爽やかな笑みを浮かべた。

「そうだったんだ。気づかなかった。同じ学校のやつ?」

「ううん」

素直に答える。

「だから、ごめんなさい。陶山の気持ちには応えられない」

そっと告げた私に、陶山は「うん、だよな」と苦笑する。

「好きな奴がいることは知らなかったけれど、泉本がそういうふうに俺のことを見ていないことは気づいてたんだ。だから、うん、だよなあ、って感じ」

「……ごめんなさい」

「いや、泉本が謝ることじゃないよ」

陶山は「勝手に俺が泉本のこと想っていただけだから、謝んなって」と明るい声で言う。でも目はやはり悲しそうで、私は申し訳なさに身を縮こませた。

「でもさ、もしよかったら、その好きな奴と付き合うまで、近くにいさせてよ」

彼の申し出に激しく首を横に振る。

「陶山の気持ちを弄ぶみたいなことできないよ」

「そんなふうに思わないよ。俺、昔庇ってくれたこと本当に感謝しててさ。恋愛的な気持ちとはまた別のところでも、泉本のことを本当に大切に想っている。泉本がしんどい時は力になりたいと思っているから、だから、新しい学校で困ったことがあったり、話を聞いてほしい時があったら、いつでも気軽に連絡して。な?」

「……ありがとう」

彼はいつの間に、これほど優しく強くなったのだろう。
自分の記憶の中にいる彼とはすっかり別人になっている。

「陶山、良い人すぎて、詐欺に合いそう。変な壺とか買ったらダメだよ」

「なんだそれ」

私たちは食事と共に、いつもの軽快なやりとりを再開した。
食後にはしっかり大きいパフェも二人で食べた。お店を出ると、真夏の太陽が私たちを眩しく照らした。

「じゃ、またな!」

駅の改札口で別れる。

「うん、部活頑張ってね」

「おう、あ、そうだ、もし冬に全国大会出れたら応援に来いよ!」

「わかった。楽しみにしてる」

「何かあったらいつでも連絡しろよ!」と大きく手を振る彼に、私も笑顔で「バイバイ!」と告げた。