一週間はあっという間に過ぎた。
金曜日の終礼の時間、高橋くんは先生に促され、最後の挨拶をするために教壇にたった。
黒板に「ありがとうございました」と書いて深々と頭を下げる。
クラス中からは暖かい大きな拍手で包まれた。
顔を上げた高橋くんははにかみながら教室中を静かに見回した。
目が合うと、高橋くんは少しだけーほんの少しだけー口角をあげた。
それに応えるように、私も目を細める。
結局、高橋くんとの間には少しのぎこちなさが残った。いや、そう感じているのは私だけかもしれない。
火曜日からは友梨ちゃんが背中を押してくれたこともあって、また少しずつ話すようになった。
高橋くんは”普通に””今まで通り”接してくれた。
それがありがたく、同時に悲しくもあった。
自分の気持ちが彼に”無かったこと”にされているように感じてしまった。
もしあの日、「好きだ」と言わなければ、以前のように、ただ楽しく穏やかな時間を最後まで築けたのだろうか。
既に気持ちを伝えてしまった今となっては、その方が良かったのかどうかも、それとも多少ぎこちなくなってもきちんと気持ちを伝えた方が良かったのかも、わからなかった。
ただ、気持ちを伝えなければ後悔をしていたとは思うから、やはり伝えて良かったのかもしれない。
終礼の時間が終わり、高橋くんと並んで学校を出た。彼はこの後すぐに両親が住む国へ向かうらしい。空港までは直通電車で行くとのことで、私は駅までお見送りに行くことになっていた。
最後のこの時間、何を話したらいいんだろう。
彼との別れを意識してからずっと考えていたけれど、何も思い浮かばなかった。
それは今も同じで、最後だというのに、私たちはいつもと変わらずたわいもない話ばかりをした。
後少しで彼と永遠に会えなくなってしまうかもしれないのに。
