きみがいる、この世界で。

日曜日のお昼前、昨晩高橋くんから送られてきていた待ち合わせ場所である駅の構内に着く。
改札を出ると高橋くんの姿が見えた。声をかける前に高橋くんは私に気が付き、はにかんだ。
その笑顔に心臓が大きな音を立てる。平静を装って「おはよう」と微笑み返すと、高橋くんも「おはよう」と口の動きで返してくれた。

【それで、今日はどこに連れて行ってくれるの?】

「楽しみにしておいて」と、高橋くんは前日まで行き先を教えてくれなかった。
ただ、二人の最寄駅から少し離れたこの駅を待ち合わせ場所にしているのだから、きっとこの駅に直結している商業施設に行くのだろう。
ショッピングでもするのかな? それとも水族館? 屋上には確か小さな遊園地もあったはず。

高橋くんはカバンの中から財布を取り出すと、1枚のチケットを渡した。
渡されたチケットを見て、思わず私は目を大きく見開く。
予想通りの反応だったのか、高橋くんは満足そうに笑う。

高橋くんがくれたのは、プラネタリウムのチケットだった。
商業施設に併設されているそのプラネタリウムは、最大級の規模を誇っていることに加え、国内には2つしかないLEDドームシアターになっている。
また、プログラムも、世界各地の夜空の名所を回るという凝ったものになっているらしく、先日オープンをしてから「今までのプラネタリウムとは比べ物にならないぐらい大迫力!」とSNS上で大絶賛だった。

それほど話題になると、全国各地から人がやってくる。
そうなるとチケットは争奪戦で、上映3日前から販売されるチケットは瞬く間に完売になる。
私も友梨ちゃんとチケット争奪戦に参加したことがあるけれど、開始から20分後にアクセスをすると既に全公演分売り切れていた。
それから何度かチケット争奪戦に参加したけれど、どうしても取れない。
区切りの良い5回目の挑戦でも取れなかった時は、正直諦めの気持ちの方が大きくなって、「いつか落ち着いた頃に行ければいいね」という友梨ちゃんの言葉に頷くしかなかった。

【ありがとう。私、ここのプラネタリウム、行ってみたかったんだ。チケット、よく取れたね?】

【実は石川さんから聞いたんだ。前に泉本さんと一緒にチケットを取ろうとしたけれど、取れなかったって。だから、頑張った】

それから高橋くんは【チケットの販売が始まる時間が授業中だったから、トイレに行くふりをして、トイレで取った】と教えてくれた。
学生としてはあるまじき行動だ。
でも私は、そこまでしてチケットを確保してくれたことがとても嬉しかった。
同時に、二人に対して勝手に嫉妬心を抱いていたことを反省した。