なんでお前が謝るんだ。律子は何も悪くない。俺が何もできず立ち尽くしている間も、お前はずっと、頑張っていたのに。


「赤ちゃん、元気に産めなくて、ごめんね」


その言葉を聞いた瞬間、もうダメだった。

その場に崩れ落ちるようにして、泣いた。まるで子供のように、声を押し殺すことなく、泣き喚いた。


バチが当たったんだと思った。

律子が隣に居てくれる、それだけで十分幸せなのに、幸せすぎるくらいなのに、俺がそれ以上を望んだから。欲張ったから。

だから、バチが当たったんだと思った。



泣き喚く俺の声に混ざり、コンコン、とドアをノックする音が響いた。


「内容物の確認をお願いします」


医者が嫌味なほど冷静な声で“内容物”と称したのは、どうやら我が子の事だったらしい。

百十四グラム、わずか手の平ほどの、小さな女の子だった。

寝ている時の律子にそっくりな、可愛い、可愛い、女の子だった。



「女の子だったんだ…」


検診の時、まだ性別は分からないと告げられていた。

その事実を知った律子は嬉しそうに微笑んで、その細い指で、つめたい我が子の頬を愛おしそうに指で擦る。


「ごめんね」


その時、律子の目からこぼれ落ちた涙を、俺は一生、忘れられない。







二月十八日、午後二時十七分。

俺たちの初めての子供は、産声を上げることなくこの世に生まれ、その翌日、火葬された。

前期破水による死産だと、医者からは説明された。