「し、仕方がないから、私が今年も一緒に花火見てあげる」
「……」
「なんなら来年も…その先もずっと一緒に見てあげてもいいけど?」
我ながら可愛くない台詞をつらつらと紡いでしまった。でも今の私は、こんな保険をかけるので精一杯だった。
やっぱ今は無理。急に言えない。だけど、いつか必ず──…
「俺ら、いつまでこんなこと続けんの」
「…え?」
「もうこういうの、終わりにしよう」
……あれ、フラれた?告白する前に撃沈しましたけど?
鈍器で頭を殴られたような、そんな感覚。
“終わりにしよう”
それって、当たり前のように一緒に花火を見に行くのはやめようってことだよね。
そっか。そうだよね。もう私達大学生だし、お互い色々と忙しいし?いつまでもこの当たり前が続くなんて、思ってなかったけど。…本当にこれが最後なの?
あれ、私いまどんな顔してるんだろ。
「…ですよね。失礼しました」
そう答えるのが精一杯だった。大翔の目を見るのが怖くて、そっと視線を逸らし俯いた。
涙を必死に堪えながらマンションの駐車場を見つめる。その直後、突然空が明るくなり、遅れて聞こえてきた爆発音に、花火の打ち上げ時間になったのだと気付いた。
いつもは綺麗に見える花火が、今日は霞んで見える。やっぱマンションからじゃなくて、会場で見ないと迫力が足りないのかも。
恐らくこれが、大翔と見る最後の花火。せめて楽しい思い出にしたい、ちゃんと胸に刻んでおきたいのに。
──もうこういうの、終わりにしよう。
さっきの大翔の言葉が頭にこびりついて離れない。
当たり前のように私達の距離を近付けていた夏に、遂に私は裏切られた。