大翔はマンションの隣の部屋に住む同い歳の幼なじみ。保育園から高校までずっと一緒で、幼い頃から家族ぐるみで仲が良く、毎年行われる地元の花火大会も、大翔と私の家族みんなで行っていた。
それが中学になると、自然と大翔とふたりで行くようになり。当たり前のように隣にいる彼に、気付いた時には恋をしていた。
お互いずっと恋人はいなかった。だからこれから先も一緒にいられるものだと思ってた。
けれど今年、私達は別々の大学に通うようになり、一緒にいる時間が一気に減った。それに焦りを感じた私は、今日の花火大会で思いを伝える予定だった。
彼女、いつ出来たんだろう。好きな人がいるなら教えてくれても良かったのに。
急にひとり取り残されたような気持ちになって、息が出来ないくらい胸が苦しくなる。私が大翔のことを考えながらヘアアレンジの練習をしている間も、その子と一緒にいたってことだよね。何も知らずに浮かれてた私、ほんとバカみたい。
今日はその子と手を繋ぐのか。大翔も浴衣着たりすんのかな。毎年私と見ていた花火を今年は彼女と見て、どう思うんだろう。
「しんどい」
いつかこういう日がくることを、想像出来なかったわけじゃない。だけど、フラれて今までの関係が壊れるのが怖かった。
でも気持ちを伝えられないまま大翔が他の誰かと付き合うくらいなら、フラれた方が楽だったのかもしれない。