『俺、圭人が好きなんよ』
健二の言葉が脳内でリフレインして、足元がふわふわと雲に乗っているかのように揺らぐ。
(健二が俺のことを好きだなんて)
最近ずっと悩んで眠れない日も続いた。健二にこの気持ちを知られてはいけないと必死に
普通の友人でいようと決めて接していたのに。
立ち尽くす圭人の様子を見て、健二は『悪い方』にとらえたようで、勢いよく頭を下げた。
「……気持ち悪いじゃろ、ごめん」
だけど、と健二がおずおずと上目遣いに圭人を見上げた。
「せめて卒業までは、友達のままでいてくれん? 俺圭人がおらんと寂しい」
健二はどれくらい圭人に嫌われるのが怖くて言い出せず、その気持ちを抑えていたのだろうか、それを思うと圭人の胸が痛んだ。
早く否定しないと。
同じ感情と抱いているのだから、素直に健二に言ってやればいいのだ。
『俺も、お前が好きだ』と。
「……俺も寂しいよ。でもおまえあっちに戻るんだろ」
少し話を逸らすと健二はまた頭を下げる。
「……ごめん、あれ、嘘」
「は?」
「圭人が寂しがってくれるかなって思うて」
それを聞いた途端、圭人は健二の両肩を掴む。
「嘘? 嘘ってことは、健二こっちにいるのか? 帰らないのか」
体を揺らしながら必死に聞いてくる圭人に、健二は苦笑いする。
「うん。おるよ。圭人が許してくれるなら隣におる」
(なんだそれ…)
圭人は全身から力が抜け、健二がいなくならないという事実にホッとしたと同時に色んな感情が混ざり合ってきた。
離れる話がなければきっとここまで健二のことを考えなかっただろう。
だけどこのままはいそうですか、なんて納得するのもなんだか悔しい。
(あんだけ、悩んだんだからな)
「圭人」
おずおずと健二に名前を呼ばれ、圭人は唇を噛む。
(ああ、もう……!)
「……俺もお前が好きだったけど、あんな嘘言うんじゃ嫌いになる」
それを聞いて、今度は健二が絶句する番だった。
圭人がまさか自分に恋愛感情を持っているとは一ミリも気がついていなかったのだろう。
驚きのあまり体が固まってしまっているのがおかしくて圭人は思わず吹き出した。
我に返った健二は圭人の肩を掴み、必死に喋った。
「ちょっ、圭人? どう言うこと? 好きだったって、いつから? なあ」
「さあ。俺もう、健二嫌いだから教えてやらない」
肩に置かれた手を払い解いて、圭人はそのまま前に進む。
慌てたのは健二だ。
告白したものの、相手も好意を抱いていたのに自分の嘘であっという間に振られそうになっているのだから。
「圭人お、本当に俺のこと好きなん?」
必死に声を荒げる健二。
「嘘ならこんなに怒らない」
「う……俺、喜んでええんか、よう分からん!」
(喜べばいいんだよ、お前は単純なんだから)
圭人はもちろん健二を嫌いになってなんかいないし、お互いの気持ちが知れて浮かれている。
その証拠に圭人の顔はさっきから緩んでしまっているのだ。
だけど、嘘をつかれていたことが悔しいから、少しからかってやる。
さて、どのタイミングで許してやろうかなと思いながら、圭人は前へと進んだ。
「ええ? いつから好きになってくれてたん? なあ、頼むけえ、もう一回、俺を好きになってや!」
【了】
健二の言葉が脳内でリフレインして、足元がふわふわと雲に乗っているかのように揺らぐ。
(健二が俺のことを好きだなんて)
最近ずっと悩んで眠れない日も続いた。健二にこの気持ちを知られてはいけないと必死に
普通の友人でいようと決めて接していたのに。
立ち尽くす圭人の様子を見て、健二は『悪い方』にとらえたようで、勢いよく頭を下げた。
「……気持ち悪いじゃろ、ごめん」
だけど、と健二がおずおずと上目遣いに圭人を見上げた。
「せめて卒業までは、友達のままでいてくれん? 俺圭人がおらんと寂しい」
健二はどれくらい圭人に嫌われるのが怖くて言い出せず、その気持ちを抑えていたのだろうか、それを思うと圭人の胸が痛んだ。
早く否定しないと。
同じ感情と抱いているのだから、素直に健二に言ってやればいいのだ。
『俺も、お前が好きだ』と。
「……俺も寂しいよ。でもおまえあっちに戻るんだろ」
少し話を逸らすと健二はまた頭を下げる。
「……ごめん、あれ、嘘」
「は?」
「圭人が寂しがってくれるかなって思うて」
それを聞いた途端、圭人は健二の両肩を掴む。
「嘘? 嘘ってことは、健二こっちにいるのか? 帰らないのか」
体を揺らしながら必死に聞いてくる圭人に、健二は苦笑いする。
「うん。おるよ。圭人が許してくれるなら隣におる」
(なんだそれ…)
圭人は全身から力が抜け、健二がいなくならないという事実にホッとしたと同時に色んな感情が混ざり合ってきた。
離れる話がなければきっとここまで健二のことを考えなかっただろう。
だけどこのままはいそうですか、なんて納得するのもなんだか悔しい。
(あんだけ、悩んだんだからな)
「圭人」
おずおずと健二に名前を呼ばれ、圭人は唇を噛む。
(ああ、もう……!)
「……俺もお前が好きだったけど、あんな嘘言うんじゃ嫌いになる」
それを聞いて、今度は健二が絶句する番だった。
圭人がまさか自分に恋愛感情を持っているとは一ミリも気がついていなかったのだろう。
驚きのあまり体が固まってしまっているのがおかしくて圭人は思わず吹き出した。
我に返った健二は圭人の肩を掴み、必死に喋った。
「ちょっ、圭人? どう言うこと? 好きだったって、いつから? なあ」
「さあ。俺もう、健二嫌いだから教えてやらない」
肩に置かれた手を払い解いて、圭人はそのまま前に進む。
慌てたのは健二だ。
告白したものの、相手も好意を抱いていたのに自分の嘘であっという間に振られそうになっているのだから。
「圭人お、本当に俺のこと好きなん?」
必死に声を荒げる健二。
「嘘ならこんなに怒らない」
「う……俺、喜んでええんか、よう分からん!」
(喜べばいいんだよ、お前は単純なんだから)
圭人はもちろん健二を嫌いになってなんかいないし、お互いの気持ちが知れて浮かれている。
その証拠に圭人の顔はさっきから緩んでしまっているのだ。
だけど、嘘をつかれていたことが悔しいから、少しからかってやる。
さて、どのタイミングで許してやろうかなと思いながら、圭人は前へと進んだ。
「ええ? いつから好きになってくれてたん? なあ、頼むけえ、もう一回、俺を好きになってや!」
【了】