年が明けて、3月も終わりに近づいていた。
よく1月は行く、2月は逃げる、3月は去るなんて言うけれど、本当にそのとおりだと実感する。
わたしの場合、1月から正社員になり、あらゆる仕事から逃げられなくなったのもあって、人以上にその言葉が真実であることをひしひしと噛みしめていた。
部長との共同生活は今も続いている。
わたしは1月以降も部長と生活したかったが、部長はどう思っているのか分からなくてどうしたものかと考えあぐねていたけど、出雲旅行から帰ってきてすぐ、部長からこう切り出された。
「白川さん、1月以降もここで一緒に暮らしてくれる?」
「もちろんです!
部長がよろしければ、わたしも是非そうしたいと思っていました」
「あー安心したー!
いやね、あなたが旅行に行っている間、どうにも物足りなくって」
ふふふ、とわたしは笑う。
「それ、わたしも部長が出張でいなかったときに、まったく同じことを思っていました」
「えー、そうなんだあ!」
嬉しそうに部長が驚く。
「ですが部長、1月以降はわたしも正社員になるので、これまでどおりの家事分担は難しくなると思います」
「そうね、もちろん分かってるわ。
もう一度家事分担を考え直しましょう」
そうして再検討した結果、やはり家賃は払わせてもらえず、生活費全般はこれまでと同じように部長が負担し(この二つは絶対に譲ってもらえなかった)、部長の服が多いことも考慮して洗濯担当が新たに部長の家事として加わった。
料理については、平日夜は毎日作らなくてもよいというルールにしてくれた。
お弁当を作りたいので結局は作っているが、できないときはできなくてよいと決めてもらえて、気持ちの面でかなり楽になった。
その分お弁当のおかずは冷凍食品をうまく活用することにして、スーパーのはしごも仕事が休みの土日に集中させている。
服と言えば、正社員になるにあたって、洋服の数を倍に増やして年間30着で回すことにした。
それでも少ない方だ。
靴も、これまでは黒いスニーカー2足でよかったけど、新しくベージュと黒のパンプスを1足ずつ追加したし、リュックでの通勤をやめ、きちんと感のあるトートバッグを新しく購入した。
後は、誕生日祝いと正社員登用祝いを兼ねて部長がプレゼントしてくれた、キラキラ光る一粒ダイヤのピアスが貴重品に加わった。
このダイヤの輝きに恥じない自分でいようと、毎朝鏡に向かって気持ちを奮い立たせている。
「部長、今日の夜は送別会ですよ」
「おお、そうだった。
忙しすぎて忘れるところだった。
お花の手配は白川さんが担当だったよね?
任せていたけど大丈夫?」
「はい、ばっちりです!」
春が近づいていて、少しずつあたたかみを増しつつある空気を胸いっぱいに吸い込みながら、同じような朝の通勤ルートをたどる人たちと共に、部長と二人で最寄り駅に向かう。
今日は金曜日。
仕事がんばって、美味しくお酒飲むぞ!
よく1月は行く、2月は逃げる、3月は去るなんて言うけれど、本当にそのとおりだと実感する。
わたしの場合、1月から正社員になり、あらゆる仕事から逃げられなくなったのもあって、人以上にその言葉が真実であることをひしひしと噛みしめていた。
部長との共同生活は今も続いている。
わたしは1月以降も部長と生活したかったが、部長はどう思っているのか分からなくてどうしたものかと考えあぐねていたけど、出雲旅行から帰ってきてすぐ、部長からこう切り出された。
「白川さん、1月以降もここで一緒に暮らしてくれる?」
「もちろんです!
部長がよろしければ、わたしも是非そうしたいと思っていました」
「あー安心したー!
いやね、あなたが旅行に行っている間、どうにも物足りなくって」
ふふふ、とわたしは笑う。
「それ、わたしも部長が出張でいなかったときに、まったく同じことを思っていました」
「えー、そうなんだあ!」
嬉しそうに部長が驚く。
「ですが部長、1月以降はわたしも正社員になるので、これまでどおりの家事分担は難しくなると思います」
「そうね、もちろん分かってるわ。
もう一度家事分担を考え直しましょう」
そうして再検討した結果、やはり家賃は払わせてもらえず、生活費全般はこれまでと同じように部長が負担し(この二つは絶対に譲ってもらえなかった)、部長の服が多いことも考慮して洗濯担当が新たに部長の家事として加わった。
料理については、平日夜は毎日作らなくてもよいというルールにしてくれた。
お弁当を作りたいので結局は作っているが、できないときはできなくてよいと決めてもらえて、気持ちの面でかなり楽になった。
その分お弁当のおかずは冷凍食品をうまく活用することにして、スーパーのはしごも仕事が休みの土日に集中させている。
服と言えば、正社員になるにあたって、洋服の数を倍に増やして年間30着で回すことにした。
それでも少ない方だ。
靴も、これまでは黒いスニーカー2足でよかったけど、新しくベージュと黒のパンプスを1足ずつ追加したし、リュックでの通勤をやめ、きちんと感のあるトートバッグを新しく購入した。
後は、誕生日祝いと正社員登用祝いを兼ねて部長がプレゼントしてくれた、キラキラ光る一粒ダイヤのピアスが貴重品に加わった。
このダイヤの輝きに恥じない自分でいようと、毎朝鏡に向かって気持ちを奮い立たせている。
「部長、今日の夜は送別会ですよ」
「おお、そうだった。
忙しすぎて忘れるところだった。
お花の手配は白川さんが担当だったよね?
任せていたけど大丈夫?」
「はい、ばっちりです!」
春が近づいていて、少しずつあたたかみを増しつつある空気を胸いっぱいに吸い込みながら、同じような朝の通勤ルートをたどる人たちと共に、部長と二人で最寄り駅に向かう。
今日は金曜日。
仕事がんばって、美味しくお酒飲むぞ!