いつからだろう。凉樹との間に溝が生まれたのは。曇ったままの心には、いつになっても陽が差さない。照らしてくれるのは凉樹という太陽だけだと思っていたのに、その太陽に裏切られるなんて。人生、一生曇ったままだ。
凉樹の肩関節から、乾いた音が聞こえるとともに、俺は現実の世界に戻った。俺の腕は彼を抱いたままの形状を維持していた。
「あ、ごめん。つい」
「あ、いや。べつに」
思い惑っている様子の凉樹。頬が火照っていく。
「あのさ、裏切ったってどういうこと?」
「・・・」
「俺は凉樹に揶揄われたくない。本当のこと言って」
目を向けるも、すっと視線を逸らす彼。
「・・・・・・、ごめん」
「何が?」
「・・・」
視線も合わせない。ごめん以外の言葉もない。そんな凉樹に、俺は吐息をもらす。
「だから、何が?」
「ごめん」
「ごめん、ごめん・・・って。凉樹、しつこいよ」
「・・・」
彼の態度が、怒りの沸点に到達した。
「凉樹、謝るだけじゃ分からない。あぁ、もう! こんなところで怒りたくないけどさ、我慢できない。なぁ、俺のこと裏切ったって何なんだよ! どういうことか説明してくれよ!」
それでも黙り続ける。こんなの、俺の大好きな凉樹じゃない。
「・・・」
「黙ってんじゃねぇよ。ちゃんと目見て言えよ」
「・・・、ここじゃ説明できない」
彼は苦肉の策という感じで呟いた。
「じゃあどこで―」
「俺ん家、じゃダメか?」
凉樹の家に行くとなると、約二年振りになる。彼の家に行けば、何か証拠となるものが置かれているかもしれない。だとすると、彼の隠し事の本質を問い詰めるチャンスだ。
俺は彼の策に乗った。すると彼はこっくりとうなずく。
すぐ足元にある浅い水たまりに、幼い子供のようにわざと足を突っ込んだ。すると、勢いよく小さな水しぶきが無数に飛び散り、濡れたアスファルトの上に落ちていく。そんな水しぶきが唐突に儚く思えてくる。
大きな窪みにできた水たまりに映る俺の顔は、なんだか寂しそうだった。これからのことに不安を抱いているみたいに。そんな俺に、手を振って別れを告げた。
凉樹の肩関節から、乾いた音が聞こえるとともに、俺は現実の世界に戻った。俺の腕は彼を抱いたままの形状を維持していた。
「あ、ごめん。つい」
「あ、いや。べつに」
思い惑っている様子の凉樹。頬が火照っていく。
「あのさ、裏切ったってどういうこと?」
「・・・」
「俺は凉樹に揶揄われたくない。本当のこと言って」
目を向けるも、すっと視線を逸らす彼。
「・・・・・・、ごめん」
「何が?」
「・・・」
視線も合わせない。ごめん以外の言葉もない。そんな凉樹に、俺は吐息をもらす。
「だから、何が?」
「ごめん」
「ごめん、ごめん・・・って。凉樹、しつこいよ」
「・・・」
彼の態度が、怒りの沸点に到達した。
「凉樹、謝るだけじゃ分からない。あぁ、もう! こんなところで怒りたくないけどさ、我慢できない。なぁ、俺のこと裏切ったって何なんだよ! どういうことか説明してくれよ!」
それでも黙り続ける。こんなの、俺の大好きな凉樹じゃない。
「・・・」
「黙ってんじゃねぇよ。ちゃんと目見て言えよ」
「・・・、ここじゃ説明できない」
彼は苦肉の策という感じで呟いた。
「じゃあどこで―」
「俺ん家、じゃダメか?」
凉樹の家に行くとなると、約二年振りになる。彼の家に行けば、何か証拠となるものが置かれているかもしれない。だとすると、彼の隠し事の本質を問い詰めるチャンスだ。
俺は彼の策に乗った。すると彼はこっくりとうなずく。
すぐ足元にある浅い水たまりに、幼い子供のようにわざと足を突っ込んだ。すると、勢いよく小さな水しぶきが無数に飛び散り、濡れたアスファルトの上に落ちていく。そんな水しぶきが唐突に儚く思えてくる。
大きな窪みにできた水たまりに映る俺の顔は、なんだか寂しそうだった。これからのことに不安を抱いているみたいに。そんな俺に、手を振って別れを告げた。