段々と意識が遠のいていくのが分かった。でも、これは暑さからなのか、怪我によるものなのかは分からなかった。ふらつきながら歩き、そこで息絶えたみたいな感じで芝生の上に転ぶ。

「あぁ、俺の好きな芝生だ」

 太陽の光をいっぱいに吸収した芝生は思っていたよりも熱かった。それでも今は寝ころんでいたかった。誰も芝生には寝ころんでいない。と言うより、周りから浮いているだけだった。暑すぎる気温と熱すぎる芝生。そう。こんな太陽が直で当たる所で過ごそうなんて馬鹿は俺しかいない。日焼けしたい野郎だと見られるぐらいが、今の俺にはちょうどいい。本当は日焼け止めを塗りたいけど、紫外線なんて気にしていられない。この時ばかりは将来シミがいくつもできたっていいと思えた。暑さでおかしくなってもいいと思えた。最悪このままどこか遠い世界へ羽ばたいてもいい気すらしてきた。やっぱり俺はある意味最強の男になりつつあるかもしれない。

「馬鹿だなぁ、俺は」

 自分で自分のことが笑えてくる。俺が俺じゃなくなっているみたいで。そんな馬鹿げたことを思っていると、刺された箇所よりも、今頃になって殴られた痕や蹴られた痕、吐き捨てられた言葉、何もかもが痛くなってきた。上回ってきていた。ここにいれば彼は来てくれるだろう。それまで少しの仮眠を取ろう。ここ最近眠れてなかったからな…。