「桃凛は、俺が最初に脱退したいって話したときに、そういう道があってもいいと思う、って一番に言ってくれた。そのとき、三つ年上の俺なんかよりもしっかりしてて驚いた。それと同時に桃凛の成長が嬉しくなった」

「咲佑くん。まるで親みたいじゃないですかぁ」

「そりゃあ、親目線になっても仕方ないだろ? だってさデビューした当時なんてまだ十五歳で、高校生にもなってないから働ける時間にも制限があったりして。だから思うようにいかないって、悔しい気持ちになったことも多々あったと思う。それでも、こうして一緒に活動できた日々は、俺にとって大切な思い出として胸に刻まれてる」

「僕も、今日までの楽しさとか、悔しさとか全部が良い思い出です」

「大学と仕事の両立は色々と大変だろうけど、頑張れよ」

「当たり前じゃないですかぁ。僕も咲佑くんみたいに、学業と仕事の両立頑張りたいんですからぁ」

「そっか。でも、頑張り過ぎて身体壊したら元も子もないから。それだけは気を付けるんだぞ」

「はい。気を付けます」

「桃凛は、まだまだこれからも成長できる。伸びしろしかない男だ。そんな内に隠し持ってる才能が開花する日が来ること、俺は信じてるから。焦らずに、ゆっくりでいい。これからの活躍も、楽しみにしてるからな」

「咲佑くん、ありがとうございます。僕、頑張りますっ」

「葉山桃凛。出逢えて本当によかった。今日までありがとう。大好きだぞ」

「こちらこそですぅ。咲佑くん今日まで本当にお疲れ様でしたぁ。また絶対に会いましょうね」

「おう」

 桃凛は泣き笑いの顔で咲佑に抱きついた。その背中に、咲佑はそっと腕を回し、優しく抱きしめる。その様子を、朱鳥と夏生は笑みを零し、凉樹は澄んだ瞳で笑いかける。

ゆっくりと体を引き離した桃凛は、咲佑に向かって強く頷き、そして微笑んだ。