「じゃあ、まずは朱鳥」

「はい」

「朱鳥、俺に憧れて芸能界に入ってくれてありがとな。芸能界で朱鳥に出逢えて、そして同じグループで活動できて本当に良かったよ。まぁ俺に憧れてるなんて、変な奴だなって思ったけどな」

「えっ、何でですか? 俺そんなに変でした?」

「なんでって…、俺のどこに憧れてるか分からなかったからだよ。でも、変だと思ってたのは最初だけ。朱鳥と同じグループで活動する中で、本当の朱鳥のことが知れて。そっからは朱鳥のことを変だとは思わなくなった。だから、もう安心しろよ」

「そうだったんすね。安心しました」

「そのことに関して、前に酒の力借りて伝えるって言ってたけど、あのとき酔ってない状態で言ってくれたこと、俺は見逃さなかったからな。まぁでも、素直に伝えてくれて俺は凄く嬉しかった。恥ずかしそうにしてる朱鳥も新鮮だったし。これからは朱鳥が誰かから憧れてもらえる、そういう存在になるんだぞ。それに、今の朱鳥は、もう既に俺のことを超えてる。だからもう俺には憧れないほうがいいよ・・・って、それは朱鳥の自由か。まあとにかく、朱鳥の美しすぎる歌声で、ポテンシャルの高さで、色んな人たちを笑顔にしてあげろよ」

「はい。咲佑くんに出逢えて、こうして芸能界に入れました。だから、明日からはこの恩を返していけるように、そして咲佑くんが言ってくれたような人になれるよう、頑張ります」

「水森朱鳥。出逢えて本当によかった。今日まで本当にありがとう。大好きだぞ」

「俺も、咲佑くんのこと大好きです。今度、また遊びに連れてってくださいね」

「おう」

 朱鳥は我慢しきれず、唇を小刻みに震わせながら涙を流した。一筋の、綺麗な涙を。咲佑は両手を広げる。朱鳥は飛び込むようにして抱きついた。朱鳥の涙が服に零れて濡れたとしても、気にせずに。