次の日、朝からへンリックがアリーナの家にやってきた。嬉しいのは当たり前の事だがひと月も早く帰って来た。
アリーナは驚いた。はっやっ!!
それに黒い服を着た男の人も一緒だ。
なんか身分が高そうだなーこの人は誰?
「ただいま。昨日帰って来たんだ。早かったでしょ。」うっすらと目の下に隈があり少しだけ目が腫れて疲れた顔だ。
「おかえりなさい。随分早いからびっくりしたわ。疲れてない?」
「大丈夫疲れてないよ。」
「ところで、そちらの方は?」
「ブリーズ国の王宮魔法士団長のクラーク殿だよ。」
「初めまして、私へンリック様の婚約者のアリーナ・ホワイティスと申します。」カーテシーでご挨拶をした。
「クラークと呼んで下さい。」にこやかに挨拶をする。
「あの石について、気になる事があってクラーク殿に来て貰ったんだ。今、石はどこ?」
「石は私の部屋にあるから今持ってくるわ。応接室で待っていて。」
アリーナは部屋に行き石の入った箱を持って来た。ブルーノも一緒にやってきた。
応接室でへンリックは、アリーナの両親、クラーク、アリーナ、ブルーノとソファに座りブリーズ国での話をした。
逃亡した魔女、行方不明の第一王子達の事。石は行方不明者かもしれない事。おそらく呪いを解く鍵はヘンリックの封印された魔力だという事。
ブルーノは「ヘンリックの魔力は最近少し増えた感じがしてたにゃ。魔力が増える事なんてあるのかにゃ?そーいえば、たまにまわりがホワホワしてる時があったにゃ。オレはあれが出てる時近くにいると気分が良くなったたにゃ。それが白魔力だったのかにゃ?白魔力は見た事なくてわからなかったにゃ。」と言った。
マリーナは知らなかったが両親はヘンリックの魔力を封印した経緯を知っていたため、
「ヘンリック君、封印を解いても大丈夫なのかい?」
「わかりません。でも、封印は永遠では無いと聞きました。いずれ封印を解くのなら今がその時なのかと思うんです。」
「封印を解く事を君のご両親には話したのかい?」
「ええ。二つ返事でとはいきませんでしたが、
了承はもらいました。」
「そうか。」
アリーナの両親は心配をしているようだった。
アリーナは黙ってみんなの話を聞いていた。
クラークは、まず箱の中にある石を確認した。
石は行方不明の8人と同じ数だ。
これが第一王子達か?
石自体には魔力はわずかしかなかった。
「この石は複雑な呪いがかかってるみたいだにゃ。オレが魔力を少し入れたら喋ったんにゃ。」
石達が言う「悪さはしないよ。」「何も覚えていない。」「わからない。」「早く助けて。」と。
「悪者だといけないから魔力はあんまりあげなかったにゃ。」
「もう少し多めに魔力を与えれば何か思い出してくれるかもしれませんね。まず一つだけやってみましょう。」そう言うとクラークは一つの赤い石に魔力を与えた。
すると赤い石から小さくて丸い赤い光が飛び出てきた。光は部屋の中をぐるりと回りあたりをうかがっているようだ。
それを見てブルーノたちは警戒をした。
クラークが光に「貴方はどなたですか?」ときいた。
光は「私はブリーズ国第一王子アレン・ルノール・ブリーズだ。」
「私はブリーズ国王宮専属魔法師団長クラークです。お久しぶりです。アレン王子。」
「おぉ、クラークか?」
「そうですクラークです。」
「探してくれたのか?」
「ええ探しました。このような形ですが、会えて良かったです。」
「苦労をかけてすまかなったな。」
「いえここにいるヘンリック殿のおかげです。」
クラークは泣きながらそう言った。
そして、クラークはもっと石に魔力を与えたが姿が変わる事はなかった。
アレン王子が何故石になってしまったのか、
光が経緯を話し始めた。
あの日、夜会に出席した時、捕まったはずの魔女が現れた。婚約者や側近と共にいたところに不意打ちで攻撃魔法を撃たれ皆がバルコニーから落とされた。落ちたところに魔法陣があり魔力を奪われ石にされた。その時にいたのはアレン王子と婚約者、側近とその婚約者の4人だったという。
その石を拾い魔女は馬車の方に移動した。
そこには、弟の第二王子と婚約者、その側近と婚約者が馬車に乗るために外に出ていた。その4人に向かって魔女は攻撃魔法を撃ち4人は馬車まで飛ばされた。あらかじめ魔法陣を馬車に仕込んでいたのか4人は魔力を奪われ石になった。それを拾い集め魔女は逃走した。
そして、魔女は国を出て隣国へ行きその後別の国に渡る。渡った先で魔女はその石をまとめて他国の商人に売り払い何処かへ行ってしまった。
石は買い取った商人が箱に入れてサリーナ国へ戻った。商人は宝石とまではいかない石なので加工をせずそのまま売ってしまおうと手持ちの見栄えのいい箱に入れ露店に並べた。そこにヘンリックがやって来た。アレン王子はヘンリックに何かを感じてありったけの僅かな魔力を使い興味をひくことに成功した。そしてヘンリックが買いグラン国に持ち帰った。
魔女についてわかることは。石に変えたのは自分に靡かない第一王子と邪魔をする婚約者や国王を恨んでの犯行だった。国に王子がいなくなれば後継がいなくなり国が成り立たなくなる。そこで第二王子も石にした。残りの者は巻き添えをくったことになる。
8人を石にした時、魔女は魔力を相当使ったためか老婆のようになった。その後、魔女はいくつかの国を渡り歩き魔力を徐々に回復していった。今頃は若い姿になっているだろうと言う。
アリーナは、その魔女は今頃何処にいるのかなー?なんてかるーく思った。
しかし、魔女の名前を聞いた時、戦慄が走る。
魔女の名前はマリーン。
もしかして?マリーンってマリン?
アリーナはブルーノを見た。
ブルーノも嫌な顔をしてアリーナを見た。
その様子をヘンリックは見ていた。
「アリーどうしたの?顔色悪いよ。」
「ぇ…あの…マリーンってどんな人ですか?」
「ピンクの髪にパープルの瞳で少し小柄かな?後、左目の下に泣きぼくろがある。」と光は答えた。
ブルーノは「あの女じゃにゃいか!?」と
アリーナに言った。
「特徴は一致してるけど…。そんな事ある…?」
「アリーナの知ってる人?」
「うん…マリンていう似た女の子がクラスにいて…それで…。」
アリーナとブルーノは学校であったことを皆に話した。
「そんな事があったんだね。なんで話してくれなかったの?」
「いや、ヘンリックはいなかったし、お父様達も丁度留守だったから、なんか言うタイミングがなくて。あとほら、学校に使い魔を連れて行ったら校則違反になるでしょう?でもブルーノが第一王子のところに行ったりしたから。じゃあこれは第一王子とブルーノに任せておこうかなーなんて思って…。」
ブルーノが「アイツ俺の事、野良聖獣だと思ってるんだにゃ。」と皆に言った。
「野良?」
「そうにゃ」
「…………。」
「おかげで高級なお肉とお菓子をお腹いっぱい食べさせてもらえたにゃ。うまかったにゃ。」
「………。」
「お腹が減ったらまたおいでって言ってくれたんにゃ。」
「………。」
誰も何も言えなかった。
アリーナは俯いて赤くなった。
クラークは石が第一王子達であった事や呪いの解除方法の事。グラン国に逃走中の魔女らしき人物が首都の学園に通っているという情報を手紙にしたためブリーズ国の国王に手紙を飛ばした。