次の日、ブルーノは猫を連れて王宮に行くことにした。
「今日はオレの友達のところへ行くにゃ。」
「友達ですかにゃん?」
「隠し道路を行くけどこの道は内緒だからにゃ。」
「内緒ですかにゃん?内緒なのにいいのですかにゃん?」
「お前は特別だからいいんにゃ。」
「特別にゃん?」

王宮の庭に出た。
「すごいところですにゃん。もしかしたらここは王様がいるところですかにゃん?」
「そうだにゃ。」
「こんなところに友達がいるのですかにゃん?」
「いるんにゃ。」
そして第一王子の所へやって来た。

「やあ、白猫待っていたよ。」
「来てやったにゃ。」
「そちらの猫はブルーノのうちの聖獣だね?」
「そうにゃ。まだ、名前は付いてないからー
お嬢さんと呼んでいいぞ。」
「初めまして、お嬢さん。私はこの国の第一王子です。よろしくね。」
「私は、名前の無い猫ですにゃん。よろしくお願いしますにゃん。」
「この子は私が世話をしている黒猫だよ。」
「黒猫さん、初めましてにゃん。」
「お嬢さん、初めまして。」
「黒猫さんは、可愛いですにゃん。」
「ありがとうございます。お嬢さんは綺麗です。」
黒猫とお嬢さんは仲良くなった。

「さあ、ご馳走を用意するよ。お嬢さんは何が好きかな?」
「私はお魚とお菓子が好きですにゃん。」
「それでは、お魚とお肉とお菓子を用意しようね。」
「ご馳走〜うれしいにゃ。」
「ありがとうですにゃん。」

「ねぇ、白猫。お嬢さんに名前はつけてあげないのかい?」
「名前は勝手に付けたらいけないにゃ。」
「そうだったね。呼ぶ時はどうしてるのかな?」
「いつも近くにいればいいんにゃ。そうすれば別に呼ぶこともないにゃ。」
「それはちょっと不自由だね。」
「お嬢さん、名前が無いと困らない?」
「ちょっと、困りますにゃん。」
「そうだよね?お嬢さんは名前を誰に付けてもらいたい?」
「私はいつも一緒にいるブルーノさんに付けてもらいたいですにゃん。」
「そうか、ならいい名前をつけてもらわないとね。ねぇ白猫。」
「か、考えとくにゃ。」ブルーノはもじもじする。
コイツはその意味知ってるのか?簡単じゃないんだぞーとブルーノは思った。

「さあ、ご馳走の用意ができたよ。お食べ。」
「いただきまーすにゃ。」
「いただきますにゃん。」
ふたりは仲良くご馳走を食べる。
それをニコニコしながら第一王子が見ている。
「こっちのお肉もおいしいにゃ。食べろにゃ。」
ブルーノはお嬢さんにお肉を分けてあげた。
「本当だにゃん。美味しいですにゃん。じゃあこっちのお魚を食べてくださいにゃん。」
お嬢さんはブルーノにお魚を分けてあげた。

第一王子はそのやり取りを微笑みながら見ていた。食べ物を分け合うのは愛情の表しというが…。どうやら、白猫はお嬢さんに恋をしているようだな。お嬢さんも満更でもない様子だ。

「お腹いっぱいにゃー。」
「私もですにゃん。」
「それはよかった。今度来るときも用意しよう。」
「そうだにゃー今度はお魚を多くしてくれにゃ。」
「わかった。お肉じゃなくてお魚だね?」
「そうにゃ。お魚にゃ。」
「ふふっわかったよ。」
「それじゃーオレたちは帰るにゃ。」
「またおいで。」
「おお、また来てやるにゃ。」
「ごちそうさまでしたにゃん。」そう言って2匹?ふたりは帰って行った。

ふ〜んあの白猫がね…。
ちょっと揶揄うつもりで言ってみたけど…。
近いうちにお嬢さんに名前がつくかもしれないな。白猫、楽しみにしてるよ。

第一王子は聖獣の「名前を付ける」その意味を知っていた。

だんだんとブルーノの周りには「ブルーノの恋」を応援する人が増えていく。

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ブルーノは王宮を出て家に帰る前に寄り道をすることにした。
首都にある公園で少し高いところにある。
そこには、見晴し台があり遠くまで見ることができる。
そこに、ブルーノは猫を連れて登った。
「大丈夫か、疲れてにないかにゃ?」
「大丈夫ですにゃん。」
「ここからドゴール山が少し見れるんにゃ。」
「そうなんですかにゃん。」
1番高いところに着いた。

「北の方を見てみろにゃ。あの雪がある山だにゃ。ここからだと小さいにゃ。」
「見えましたにゃん。あれがドゴール山…。」
「オレたちが生まれたところにゃ。」
「そうですにゃん。私の生まれたところですにゃん。」しばらく猫はそれを見ていた。
「お父さんの領地だからお願いすれば行くこともできるにゃ。」
「そうなんですかにゃん?」
「お前が帰りたいなら、お父さんにお願いして連れて行ってもらえるにゃ。どうするにゃ?」
「…私はよく覚えてないですにゃん。特に帰りたいとかは思いませんにゃん。」
「そうか、そうなんだにゃ。ちょっとオレ安心したにゃ。」
「……。」
「この間、お父さんが来た時にお前が連れて行かれちゃうと思ったんにゃ。お父さんはそんなことはないって言っていたけど、お前が帰りたいって言ったらきっと連れて行くだろうと思ったんにゃ。」
「私は帰らないですにゃん。」
「そうか、オレはお前とずっといたいんにゃ。」
「私もですにゃん。」
そこに風が吹いた。

「ところでさっきアイツが名前の話したにゃ。オレが名前を付けていいのかにゃ?」
「お願いしますにゃん。」
「その意味をお前は知ってるのかにゃ?」
「知っていますにゃん。私は聖獣ですにゃん。だからブルーノさんに付けてもらいたいんですにゃん。」
「えぇ?ほんとーにかにゃー?」
猫が頷く。
「わ、わかったにゃ。いい名前を考えるにゃ。」
「はいにゃん。」
「そ、そろそろ帰るにゃ。」
「はいですにゃん。」

ブルーノは
うわぁーほんとう?どうしよどうしよー!!
ドキドキした。 

ねぇブルーノ、これって相思相愛じゃないの?

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その晩、こっそりとブルーノはヘンリックに猫の話をした。

ヘンリックは喜んでくれた。
そして、アリーナに伝えてくれた。
「ブルーノよかったじゃない。嬉しいわ。」
「そうだね。よかったね。」
「いい名前考えてあげてね。」
「そうだにゃ。考えるにゃ。」とブルーノはもじもじとしていた。

ヘンリックが
「実は、アレン王子の立太子と結婚のお祝いでブリーズ国に行くことになったんだ。明後日には出かけるけど、もちろんみんなもだよ。」
「じゃあ、ちょっと色々と考えなきゃね?」とアリーナがヘンリックに何かを耳打ちしている。
ヘンリックはそれを聞いてうんうんと嬉しそうに頷いてる。

ブルーノにはよくわからなかったけど、
ふたりが喜んでくれて良かったと思った。