ブルーノは聖獣。
アリーナとヘンリックが結婚して新居に移った。その時にブルーノも住まいをそこに移した。
ブルーノはアリーナの使い魔、だからアリーナのいるところには付いて行くのだ。
新居は大きな屋敷で、庭も広い。
ブルーノは部屋を貰った。ふかふかのベッドにソファがあって気に入っている。
アリーナとヘンリックがいない時は、王宮の友達のところへ行って話をしたりご飯を貰ったりしている。
ヘンリックが外国に行く時はアリーナが同行するので、ブルーノもついて行く。
その時は従者として人型になる。
そのため最近は人型にも慣れてきた。
外国で2人が出かけて留守の時は猫になって街の探索をしている。
ひとりになるとちょっとだけ寂しいと感じるようになったブルーノ。
今日はアリーナとヘンリックが2人で出かけた。
ブルーノは早速街の探索に行く。
ここはグリード国の大きな港町だ。
ここは、魚が美味しいところだとヘンリックが教えてくれた。
さっかなーさっかなーさっかなーはどこだー?
市場で魚が売られていた。
まさかあれを獲ったりは出来ないなー。
ドロボーになっちゃうもんなー。
と、思って見ていたら、薄汚れた猫が魚を見ていた。
市場のおじさんがそれに気がついて
「また来たのか?お前にはあげられないよ。これは売り物だからね。」そう言ってしっしっと手を振って追い払っていた。
追い払われた猫は弱々しく去って行く。
可哀想にお腹が減ってるんだな。
ブルーノはその猫を追いかけた。
追いかけた先の路地裏でその猫が倒れていた。
「お前、お腹が減ってるのかにゃ?」そう声をかけてみた。よく見るとその猫の首には魔力を使えなくする首輪がはめられていた。
「お前、聖獣かにゃ?」
猫は首を縦に振ってそうだと身振りで答えた。
「オレの背中に乗れるかにゃ?」そう言ってブルーノはその猫を背中に乗せて泊まっている宿に連れて行った。
ちょうどアリーナたちも帰って来ていた。
「ヘンリック、この子の首輪外してほしいにゃ。市場の近くで倒れていたにゃ。」
「どれどれ、見せてごらん。」
ヘンリックは外してしばらくその首輪をみていた。
「お腹が減ってるみたいなんだにゃ。何か食べさせて欲しいにゃ。」
「わかったわ。」
アリーナはご飯をあげてみる。
猫は恐る恐る食べ始めた。
「ここは大丈夫にゃ。誰もいじめないにゃ。」
「そうだよ。安心してお食べ。」
ご飯を食べ終わった猫は今度は眠そうにしていた。
「ここで寝ていいよ。」アリーナはソファにクッションを置いて猫をそれに乗せた。
そしてすぐに猫は寝てしまった。
「随分疲れていたんだね。回復魔法かけてあげようね。」ヘンリックは魔力を使った。
「この子は聖獣だにゃ。どうしてあんなところでお腹すかしていたんだろうにゃー?あんな首輪着けらてにゃ。」
「何処で見つけたの?」
「市場の近くの路地裏だにゃ。」
「どうしてだろうねぇ?起きたら聞いてみよう。」
「この子はオレと同じところで生まれた聖獣だと思うにゃ。」そうブルーノが呟いた。
3人?は猫が静かに見守った。
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猫は次の日の朝になって目が覚めた。
ブルーノは猫に「気分はどうだにゃ?お腹減ってないかにゃ?」と聞いた。
猫は「気分はすごくいいにゃん。ちょっとお腹は減ったにゃん。」と小さい声で言った。
ブルーノはアリーナに「あの子にご飯あげて欲しいにゃ。」そう言ってご飯を貰った。
ブルーノと猫は2匹で食べた。
「少しは元気になったかにゃ?」
「うん。ありがとうにゃん。」そう言った。
「お前は聖獣だろう。どうしてこんなところにいるんにゃ?ご主人はいないのかにゃ?」そうきいてみた。
猫は元々使い魔として一人暮らしのお婆さんと暮らしていた。優しいお婆さんだった。ある日、お婆さんは具合が悪くなり病院に入院してしまった。猫は毎日病院まで行った。
だけど、お婆さんが亡くなってしまった。
遠くに住んでいる息子という人がやって来てお婆さんの葬儀が終わるとお婆さんの家を整理して売ってしまった。そして、その息子は連れて行く時に聖獣だと知られてはいけないからと首輪をつけた。しかし、本当は連れて行く気は無かった。息子は船に乗って行ってしまい猫はそのまま港に置いてけぼりにされてしまった。首輪がついていれば追いかけて来ないと思ったのだろうか。
猫は捨て聖獣になってしまったのだ。
行くところもない、聖獣の力も使えない、普通の猫と違い狩りも出来ない。仕方なくそのまま、港の市場でウロウロしていたという。
聖獣は使い魔の主人が亡くなった場合その関係は消滅してしまい付けてもらった名前は忘れてしまう。だからこの猫は今は名前が無い。
アリーナは「その息子って酷い人だね?なんとかならないの?」と怒った。
「何処の誰か知らないからにゃ。まぁ、わかったとしてもそんなヤツのところへは行かない方がいいにゃ。」
ヘンリックは「そうだね。まずは、お風呂に入るかい?随分汚れているよ。」
ブルーノは「濡れたら可哀想だにゃ。ヘンリック申し訳ないけど、浄化で綺麗にしてあげて欲しいにゃ。」
「そうだね。じゃあブルーノも一緒に浄化しようね。」
ピカッ!!ピカッ!!
「どう?綺麗になったかな?」
すると、あの汚れていた猫は毛が真っ白でふわふわになった。痩せてはいるがとても綺麗な猫になった。目はブルーだ。
アリーナは「あらーとても綺麗だわ。うふふっそれに美人さんね。」
ブルーノも猫を見て綺麗だなーって思った。
でもちょっと恥ずかしくて口に出せなかった。
「これからどうしようね?このまま港には置いて行けないよね?」ヘンリックが言った。
「生まれた所に帰る?」アリーナが聞いた。
「それは無理だにゃ。今までご飯を貰っていたヤツが野生にはなれないにゃ。」ブルーノはそう言った。
「私はまた誰かと暮らしたいにゃん。もう、ひとりにはなりたく無いにゃん。」そう悲しそうに猫が言った。
「じゃあ、うちの子になる?」アリーナが言った。「ねぇヘンリックいいでしょう?」
「僕は構わないよ。うちの子になるかい?無理に使い魔にはならなくていいからね。」
「いいのかにゃん?嬉しいにゃん。」
「ブルーノもいいよね?」
「オレもいいにゃ。お前人型になれるかにゃ?」
「なれるにゃん。」
「アリーナ、この子の服を用意してあげてにゃ。」
「わかったわ。うふふ、後で買いにいきましょうね。」
アリーナは女の子の世話ができて少し嬉しかった。