教会でアンダーソン公爵夫婦とホワイティス伯爵家族は訓練場に行った3人の帰りを待った。
今日はブルーノもいる。
そこに、ブリーズ国の魔法師3人も加わった。
教会にある少し大き目の部屋でみんなが座り黙って待っていた。
そこに、神官長が入って来た。
手にあの石の入った箱を持っている。
「3人が来るまでに少しお話をします。
これから来る3人のうちの1人が、この石の呪いを解く白魔力を持っています。その者がこれからも普通の生活が出来るように白魔力の事は口外しないと誓って下さい。お願いします。」
皆が一斉に頷く。そこへ神官がやって来て「到着されました。」と声をかけた。
そしてヘンリックたち3人は部屋に通される。
家族や仲間たちに迎えられて少し照れたような顔をしている。
ヘンリックは真っ先にアリーナの元に行き「ただいま。」「お帰りなさい。」と挨拶をする。
ヘンリックの両親はこっちは後かーと少しだけ落ち込んだが、ビルバーグが「父上、母上ただいま。」と抱きついた。
挨拶が終わり、いよいよ石の浄化をはじめる。

広い部屋の真ん中に赤い石を置きヘンリックが浄化をかける。すると赤い石が光に包まれだんだんと人の形になり赤い瞳の青年になった。
髪は金髪で端正な顔つき。細身で長身。
白い正装で金色の豪華な刺繍が施されている。

「アレン王子!」クラークが叫ぶ。
「おお、戻ったぞ!!」
「やっとお会い出来ました。」
「クラーク苦労かけたな。」
「いえいえ、ヘンリック殿のおかげです。」
「ヘンリック、良くやってくれた。感謝する。」
「いえ皆さんが頑張ったおかげです。」

さて、次は黄色い石だ。
ヘンリックが浄化をかける。すると石が光に包まれだんだんと人の形になり金の瞳の女性の姿になった。長い黒髪で目は大きく睫毛は長い。
とても綺麗な人だ。豪華な赤いドレスを着て
金色のネックレスを付けている。

「ナターシャ!!」
「アレク様!!」2人は抱き合った。
「あぁまたお会いできるとは……。」涙を流しながらアレク王子と喜び合う。

そしてヘンリックは次々と浄化をかけていく。そして、8個の石は浄化され8人になった。
よく見れば石の色はその人の瞳の色だとわかった。

「ヘンリック殿。ありがとうございました。この御恩は一生忘れません!!」
クラークやアレン王子達が感謝を述べる。

「いえいえ、僕だけの力ではありません。みんなで頑張ったおかげですよ。」

神官長は「よかったですね。これで完全に呪いは解けました。それからみなさん、先程のお話を忘れないで下さいね。」

ビルバーグは「先ほどの話って何?」と父に聞いた。
「ヘンリックが白魔力を持っている事を口外しないという事だ。」
「えっ!弟の自慢出来ないって事?」
「そうだ。わかったな。」
「はーいわかりましたぁ。」と元気無く返事をした。

ブルーノはヘンリックに
「随分と魔力が強くなったにゃ。必ず白魔力は隠すんだにゃ。自分のためだにゃ。あとアリーナのためでもあるにゃ。」
「そうだね。ブルーノは僕がいない間アリーナを守ってくれたんだって?ありがとう。これからもよろしくお願いします。」
「まかせろにゃ。」
そんなやり取りをアリーナは見ていた。

そして、少し離れた所でアンダーソン公爵はブルーノを見ていた。
「アレが野良ねぇ。野良。プッハハハッ。」
公爵は笑い上戸であった。

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その後、公爵と伯爵と魔術師団長のクラークは
マリンについて話し合った。
マリンについて魔女と断定ができていない。
アレン王子達を証人になってもらえばマリンを魔女とだと断定が出来る。そこで、アレン王子達を王宮の地下牢でマリンと対面をしてもらう事になった。

地下牢でアレン王子を見たマリンは蒼白になった。
まさかあの呪いをといたの?
マリンに会ったアレン王子は
「その女はあの魔女に間違いありません。」と言った。
第二王子もまた「魔女に間違いない。」と言った。
マリンは第二王子に「あの時はフードを被っていたから顔なんか見てないでしょ。」そう言った。
「あの時とは?いつのこのかな?」伯爵が聞いた。マリンは「………。」悔しそうにして黙ってしまった。
「これで、逃亡中の魔女だと断定できましたね。」とクラークに言った。
「はい。ありがとうございます。」
「それでは身柄はブリーズ国に送ります。よろしいですね。」
「はい。ありがとうございました。」


こうして魔女はブリーズ国に送られ厳しく取り調べが行われた。
アレン王子にかけた魅了は自分の黒魔力で作った魔道具を使った。しかしあまり出来が良くなかったために見破られてしまった。
また、石の呪いは闇ギルドから入手した呪いのスクロールに自分の魔力を足して作った物だった。マリンは解除の方法を知らなかった。そして、ピナ国からどうやって魔道具を盗んだのか。それは、封印を解く鍵を持つピナ国の管理官を言葉巧みに騙して盗んだ。その管理官はその後亡くなっていて、マリンが手を掛けたとされた。
国家反逆、窃盗、殺人、禁忌の魔道具使用などの罪が明らかにされた。
極刑は免れないだろう。

その後、アレン王子達とクラークと魔法師団員は無事にブリーズ国に帰って行った。

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ヘンリックとアリーナは2人で1ヶ月後のデビュタントの衣装合わせに街にやって来た。
「ここのお店はとても評判がいいんだって。」
「高そうだね?」
「これくらい大丈夫だよ。さぁ入ろう。」

2人はあれやこれやと見てお互いに似合う衣装を選んだ。選び終えるとにこやかに店を後にした。とても満足した買い物だった。
仕上がりが楽しみだ。

帰りにカフェに寄ってお茶やケーキで休暇をした。
「王宮の舞踏会でデビュタントでしょ。そこに一家全員招待されたの。ブルーノもなんだよ。」
「ブルーノは猫のままで行くの?」
「ううん。人型で行くよ。だって猫はマズイでょ?第一王子がいるし。」
「そうだねぇ。衣装は決まってるの?」
「お母様が用意するみたい。」
「それはちょっと楽しみだね。」
「ふふっそうね。」

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その頃、アリーナの家ではお母さんがブルーノの採寸をしていた。
ブルーノは人型になるとシルバーで所々に青が混じった髪になり瞳は金色だ。
背は高くて肌は白く整った顔をしているが八重歯が少し尖っている。
それを休暇で帰っているデイビッドは見ている。
「お母さん、オレ人型あんまり得意じゃないんだよ。」
「少し我慢してね。すぐに終わるから。」
「服なんて窮屈だよ。」
「でもね服は着ないとねぇ。裸では行けないわ。」
「そうだにゃぁ。どうせ作るならカッコいいやつがいいな。」
「そうねぇ。カッコよくて上品な感じにしましょうね。」
「ねぇ僕とお揃いのはダメ?」
「ディビットとお揃いは嫌だにゃ。」
「兄弟みたいでいいじゃないか?」
「兄弟だったらオレはデイビッドのお兄ちゃんになるな。背も高いし。」
「えー!」
「オレの方が歳上だ。お前みたいな子供と同じなんて嫌だにゃ。」
「そんなー。」
「はいはい。2人とも喧嘩しないの。」
「はーい。」
「お母さん。オレはデイビッドとお揃いは嫌だからにゃ。」
「ハイハイわかりましたよ。次はデイビッドの番よ。」
「はーい。」
人型になると普通に喋ったりそうでなかったりのブルーノだった。
そして、息子が2人いて嬉しいお母さんだった。