ここはアンダーソン家の訓練場。
その訓練場は首都から離れた廃鉱山跡地である。周りには人家は無く昔事務所として使っていた小屋があるだけ。
広い敷地は砂利を敷き詰められていて草木は全く無い。

ヘンリックは訓練をしていた。
クラークに魔力の出し方の基本を教わる。
「自分の中にある魔力から一つを出して下さい。それをそれぞれの魔力一つづつ行います。」
まずは赤魔力。
「小さな魔力から行えば後は楽にできるはずです。」
ヘンリックは目を瞑り自分の中から魔力を探り当てる。それを表に出す。手のひらに赤い光が灯る。
「そうですうまく出来ましたね。今度は違う魔力を出してみましょう。」

2人の様子を兄ビルバーグは見ている。
オレは光を出すのに3週間ぐらいかかったな。
ヘンリックは天才か?すぐに出来ちゃったじゃないか。

ヘンリックは自分には素質が無いと思っていたが本当はあったのだ。それも天才的に。
そしてヘンリックは赤から始まり次々と違う光を出している。
そしてとうとう最後の白魔力だ。
白魔力はヘンリックの手でかなり大きな光を出した。

ビルバーグは初めて見る白魔力に驚いた。
これが白魔力か、なんて大きさなんだ。
やっぱりヘンリックは天才だったんだな。

「よく出来ました。ヘンリック殿。こんなに早く出せるとは思いませんでした。」
「ありがとうございます。」ヘンリックは肩で息をしながら答えた。
「今日はこの辺で終わりましょう。初めてですから体力がかなり消耗しているはずです。」

ビルバーグはヘンリックの肩を抱いて急拵えの休憩所に連れて行く。
「ヘンリック、凄いじゃないか。お前は天才だ。」 
「へぇ…。」
「そうですね。私も驚いています。素質がないなんて言っていたのに、それどころかヘンリック殿は天才だと私も思います。」
「兄上、そうなの?」
「あぁ、俺が光を出した時は随分かかったんだぞ。お前は簡単に出せたじゃないか?」
「明日はもっと頑張るね。」そう言うとヘンリックは寝てしまった。

翌朝、ビルバーグが朝食を作り3人で食べる。
「ビルバーグ殿手間をかけさせて申し訳ありません。」そう恐縮するクラークに「そんな事ありません。ヘンリックの先生になって貰っているんですから。それにこれは僕が好きでやっているんですよ。」とにこやかに答える。
「兄上ありがとう。」
「なーに弟のためだ。」
そう言いながらヘンリックの頭を撫でる。
「今日も頑張れよ。兄上が見守っているぞ。」
クラークはその様子を見て、あぁこの兄はブラコンなんだなぁと思った。

今日も訓練が始まる。
「今日は昨日取り出した魔力を大きくするところから始めましょう。まずは赤魔力からです。」
ヘンリックは昨日の通り赤魔力を手に出した。
なかなか大きくならない。
「大きくなるように念じて下さい。」
すると赤い光が大きくなった。
「それを形にするように、炎になるよう念じて下さい。」
すると赤い光が炎になった。
「そうですその調子です。」
ヘンリックは炎の形を念じている。
「彼方に向かってその炎を飛ばして下さい。」
ヘンリックは手を上げて投げるように炎を飛ばした。
ドッカッーン!!と爆音が響き100メートルほど先に大きな穴ができた。
クラークとビルバーグは目を見開いてしばらく声にならなかった。
「初めてにしては威力が大き過ぎです。」
「おいおい、凄すぎるだろ…。俺の弟。」
ヘンリックも自分の力に驚いた。
「これは、随分と力を込めて炎を作りましたね。」
「いえ、そんなには込めたつもりは無かったんですが…。」
「えっ!!もっと力を込める事も可能と言う事ですか?」
「多分…」
「………素晴らしい。」
しばらく3人は声にならなかった。
「大きな力があるのならばそれを加減して使えば問題ないです。その辺も訓練していきましょう。」
そして訓練を続ける。

ビルバーグは弟の魔力に驚愕した。
この事を父上や母上にも教えてあげないと。
驚くだろうな。
早速、手紙を書いてそれを飛ばす。

「赤緑黒の魔力は大体形になりましたね。今日はこの辺で終わりましょう。」
「はい。」
その夜、ヘンリックは晩御飯を食べて倒れるように眠りについた。

ビルバーグの所に父から手紙が飛んできた。
手紙の内容は魔女の調査でブリーズ国から魔法師が来ている事や学校に調査が入ると言う事。
クラークにその内容を教える。
「マリンという少女が魔女だとまだ断定はしていないみたいですね。アリーナがなんだかに巻き込まれそうになったらしいけど、無事だそうだ。まぁ、あの聖獣がついているから心配はないさ。」
「魔女の件はうちの魔法師に任せておいて大丈夫でしょう。」
「この事はヘンリックにはまだ教えない方がいいね。アリーナの所に飛んで帰るって言うと思うから。」
「そうですね。おそらく後2日もあれば形になると思われます。それまでは頑張ってもらいましょう。」