この世界には、大陸と海、そして豊かな自然がある。聖獣も魔獣も存在し人々は魔法が使える。
そんな不思議なところ。

この世界の大陸にはいくつもの国がありその一つにグラン国がある。
グラン国は大陸のほぼ中央にある。
特産品も多数あり豊かで平和な国である。

そこの首都に住むアリーナ・ホワイティス16歳。淡いオレンジ色の髪、グリーンの瞳でまだ幼さが残る可愛らしい顔立ち。華奢な体つき。
勉強は得意だが魔法はあまり上手に出来ない。
首都の学園に通っていて今年卒業する。

彼女には家族は両親と弟がいる。
父は伯爵で母と少し離れた領地の経営をしている。今はアリーナが学園に通っている為、領地と首都のタウンハウスと行ったり来たりをしている。
五つ年下の弟のデイビッドは魔力が人より強い為、少し離れた魔法学校で寮生活をしている。長期の休みには家族と過ごす。

そんな彼女には五つ年上のヘンリック・アンダーソンという婚約者がいる。
両親が友達同士で小さい頃からの幼馴染だ。
ふたりはとても仲が良くアリーナは慕っている。アリーナが今年学園を卒業したら結婚する事になっている。デビュタントはエスコートしてもらう予定だ。

ヘンリックは公爵家の次男。魔力は少なく使えない。剣を使いこなし学問は優秀で数カ国の言語を話す。グラン国の外交官補佐をしていて将来は正式に外交官となる予定だ。
彼はアリーナとの結婚を心待ちにしている。

ある日、ヘンリックがお土産と花を持ってアリーナに会いに来た。忙しいエンリックと会うのは数週間ぶりだろうかアリーナは久々に会えたのでとても嬉しかった。

テラスでお茶を飲む。
「アリー。しばらく会えなくてごめんね。これ、お土産だよ。」そう言って可愛いお花と綺麗な箱を渡す。
「いつもありがとう。」そう言って受け取った。
「これはね、この間サリーナ国に行った時に露店で見つけたんだ。高価な物ではないんだけど箱が綺麗で妙に目に付いたんだ。それでアリーに買って来たんだよ。」
箱を開けると綺麗な石が8個入っていた。
「わぁ綺麗。」
「宝石とまではいかないらしいんだけどとても綺麗だろう。」
「嬉しい。宝物にするね。」
ヘンリックは「お返しは、ここで。」と頬を指さした。アリーナはヘンリックの頬に「チュッ」とキスをした。お互いに少し赤くなった。

「そういえば、もうすぐデビュタントだね?準備は出来てる?」
「まだ、ドレスが決まらないの。」
「じゃあ、僕がドレスを贈るよ。いいよね?」 「えっ、いいの?」
「いいに決まってるじゃないか。僕はアリーの婚約者なんだから。」
「わかったわ。楽しみにしてるわ。」
2人は仲睦まじくお茶を飲んで会話を楽しんだ。

その夜、アリーナはもへンリックかららった石を眺めていた。
透き通ってとても綺麗。ガラスで出来ているのかしら?宝石ってほどではないとヘンリックは言っていたけど?
するとそこへ、アリーナの使い魔ブルーノがやって来た。この使い魔、聖獣ブルーノは今の見た目は毛足が長い白い猫で目はゴールド。人型にも変身できる。ちょっと食いしん坊だけど頼りになる。本当の姿はアリーナにまだ見せていない。
アリーナがまだ小さい頃、怪我をしたブルーノを手当てしたのがきっかけで使い魔になった。
それ以降アリーナの家に居座っている。

「なんか、変な感じがするにゃ。」そう言ってアリーナが持っている石を見る。
「ヘンリックから貰ったのに変なこと言わないでよ。」
「なんか怪しいにゃ。オレにかしてみるにゃ。」と強引に口にくわえて床に下ろした。
そしてブルーノは前足で魔力を加えた。
すると石は「痛いっ。乱暴に扱わないで下さい。」と声を出した。
「きゃっ石が喋った。」アリーナが驚いた。
「ほらみろ。この石は呪われてるにゃ」
「呪われてる?」 「そうにゃ。」
「他の石もかにゃ?」
石に魔力を少しだけ分けたあと話しかける。
「そうです。僕たち呪われて石にされたんです。元々は人間です。ですが、記憶が無くて僕たちが何者かもわからないんです。」
「呪われるなんてどんな悪さをしたのにゃ?
悪者だったら困るからあんまり魔力はあげないにゃ。」
アリーナはブルーノに「この呪い解ける?」と聞いてみた。
「うんにゃ。今は出来にゃい。」
「なんとかならない?悪い人だとは限らないでしょ?」
「それはそうかもしれないが、勝手には出来ないにゃ。ヘンリックがどこで手に入れたか詳しく聞かないとわからないにゃ。」
「わかった。さっそく手紙を書くわ。」アリーナは手紙を書いてブルーノに飛ばしてもらった。

次の日、アリーナは学園に行く。
「ブルーノ後はよろしくね。」
「わかったにゃ。」
アリーナの学園は馬車で10分ほどのところにある。アリーナは魔力が少ないので普通科に通っている。クラスに行くと最近編入してきたマリンが隣の席の男の子マークとベタベタしながら話しをしていた。
マリンはピンクの髪でパープルの瞳可愛らしい顔をしていて、左目の下の泣きぼくろが特徴的だ。庇護力を掻き立てる感じの女の子。最近男爵家の養子になったときいている。
「おはようございます。」席に付き授業の用意をする。隣の席ではまだ話しをしていた。

お昼になり食堂へ行くとマリンとマークと他に男子数人と楽しそうに食事をしていた。
それを見て「婚約者同士ではない男女があまり近づくのはよくないのでは?」そう注意をした。マリンは「別に仲良くするぐらいいいじゃない。」とアリーナを睨んだ。
周りの男の子たちもうんうんと頷いて気にしてない様子だ。マリンをうっとり見ている。
男子達の様子が変だ。
アリーナは黙って離れた席に着き食事をした。そこへマークの婚約者リリーがやって来た。
リリーは学園に入学してからの友達だ。
「なんか急にマークが冷たくなったの。どうしてかな?」悲しそうにアリーナに聞いた。
「あれを見て。さっき注意はしたんだけど。なんか男子達変だったよ。」
「私嫌われちゃったのかな。」そう言ってリリーはしょんぼりと肩を落とした。

下校の時間になった。
校舎から出ると校門でヘンリックが待っていた。迎えに来てくれたらしい。ヘンリックに向かってアリーナは走って行った。

少し離れたところからマリンは2人を見ていた。マリンはマークにあの男の人は誰か聞いた。マークはアリーナの婚約者でヘンリックといいアンダーソン公爵の次男で外交官補佐をしている人だと教えた。

ヘンリックは長髪で金髪、それを後ろで縛っている。目はブルー目鼻立ちが整って綺麗な顔立ちをしている。細身で身長は高い。
かっこいいのだ。

公爵家で将来は外交官ですって?エリートじゃない。この学校にいる男子なんかよりずっとかっこいい。羨ましい。
あの人に近づくにはーどうすれば…
そうだ!
まずは、あの女と友達になればいいのよ。
そうすれば、あの人に近づけるわ。
その後はあの人を足がかりにして、上位貴族の男たちにも魅了を使って取り入ることもできそうね。
学校の男子だけじゃ物足りないもの。
そうマリンは思った。