召喚ファミリー

「あなたっ!!」
「やった!成功だ!」
「全員いるわ!!」
そこは、見たこともない広い大広間。
5人兄弟の周りには白いロープを纏った人たちがいた。
「ここは何処だ?」長男がが言った。
「ヤッベ!何処?」次男が言う。
「マンマッ!パッパッ!!」姉の腕の中で妹が叫んだ。
「おねぇちゃん、こわいよー。」弟が姉にしがみついていた。
妹が手を伸ばした先には去年死んだ?はずの両親がいた。
「ジン、ケイ、ミア、ユウ、ミミ!!」
「お前たち!」
2人は私たちのところへ駆け寄り号泣する。
そしてみんなを抱きしめた。
「ジンにぃ、私たち天国にきたのかな?」
「そうかも?」
「マジで?天国?」
「天国なの?こわいよー」
「マンマ。パッパ。」
みな、それぞれが喋り収集がつかない。
そこで、お母さんは
「はーいはーい一旦おしゃべりはやめてくださーい。」そう言いながら手をパンパンッと叩く。
皆が黙って母の方を向く。
「私たちは貴方達のお母さんとお父さんでーす。わかりますかー?」
「ジンにぃやっぱりここ天国だよ〜。」
「俺たち死んだ?」
「マジ?ねぇマジ?どうするんだよ?」
「うわぁ〜ん!僕死んじゃったー!!」
「マンマ、パッパ」
そこで、お父さんが手を叩く。皆が黙る。
そこで「はーい。ちゅーもーく!!」と手を上げる。
「はーい。よく聞いて下さい。ここは、天国ではありませーん。ですからあなたたちは死んでいませ〜ん。」
「どういうこと??」
「これから説明しまーす。」

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去年の夏、結婚20周年を記念して両親はハワイ旅行へいった。
手を繋いでスキップして仲良し夫婦は飛行機に乗り込んだ。
それを子供たちは生暖かく見送った。

8日ほどした頃台風の影響で日程よりも帰国が遅れると連絡があった。
その後、ニュースでハワイに台風が上陸していることがわかった。
「ジンにぃお母さんたち大丈夫かな?」
「んー大丈夫だろ?建物から出なければ。」
「そうだよね。」
などと言っていた。が。
大使館から連絡が入り父と母が行方不明になっているという。
なんでも、あの2人はせっかくハワイに来れたのだからと観光を無理矢理、強行した。
台風の中、ガイドが止めるのを振り切りダイヤモンドヘッドまでたどり着いた。2人は先端に向かって歩いて行った。
ガイドが2人を見たのがそれが最後となった。

ジンはそれからあちこちに連絡して両親を探しにハワイに行く事になった。ジン以外の兄弟たちは家で待機して待つように言われた。
そしてジンはハワイで両親を探した。
現地では、自殺か?と囁かれていたが自殺するには動機が全く無いことから事故だろうとのこと。
捜索には現地の人、大使館の人、が手伝ってくれた。見つかったのは父の傷だらけの腕時計と母の画面が割れたスマホだけだった。
そして、ふたりが見つからないまま、ジンは夏休みが終わる頃に帰国した。

傷だらけの腕時計と画面が割れたスマホは父と母の遺影とともに置かれた。
遺体が見つからないので葬式はしていない。
死亡届も出せずにいた。

兄弟たちはきっとお父さんとお母さんは死んじゃったんだと思っていた。
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一方行方不明となった2人は

ダイヤモンドヘッドへ行って、雨風がすごい中
自撮り写真を撮っていた。
カッパを着たふたりは
「ハイっチーズ!!」とシャッターを押した。
その時、強い風に2人は煽られ海のなかへ落ちた。
夫は妻を庇う様に抱きかかえた。

俺たちはもう死ぬんだろうな。
もっとたくさん写真撮りたかったのに…。
ここで、愛を叫びたかったのに…。

私たちもう死ぬのね。
まだ、観光する所が残ってるのに…。
ここで、愛を叫びたかったのに…。

愛ではなく悲鳴を上げていた。

2人は抱き合いながら海に沈んでいった。
息ができない苦しい、意識が薄れていく。

そのとき、ふたりを光が包み込んだ。やがて、その光が消えていくと周りが見えてきた。白い壁と床、そして丸く何かが書いてある真ん中にいた。それを数人の白い服を着た人に囲まれていた。

「あなた、ここは天国ですか?」
「死ぬ時は一緒になんて言っていたけど本当にそうなったんだね。」
「あぁ、翔太郎さん。」
「華恵っ!愛してる。」
「私もっ!!」と強く抱き合った。

そこへ、白い服を着た男の人が2人の肩を叩いて「あーすいませーん。ここは天国ではありませーん。まだ、お2人は死んでませーん。」と言った。
「??」
「!?」

「貴方がたは特別な能力があります。そこで私たちは貴方がたをこの世界に召喚させてもらいました。」
「召喚ですか?」
「そーです。ちょうど危ないところでしたのでタイミングがよかったです。怪我もなかったですよね。」とにっこりと笑った。
「そりゃどうもありがとうございます。」
「どういたしまして。」
「ところで、私たちに能力と仰いましたが私達は普通の者ですが?間違ってませんか?」
「間違いはございませんよ。あとですねー召喚と同時にこの世界の能力もプラスされました。」

「脳力ー?」ふたり揃っては首をコテっと横にして聞いた。
「魔法が使えます。」
「魔法ー?」また、2人揃って首を反対側にコテっと横にする。
「まーいずれわかりますよ。では行きましょう。国王がお待ちです。」
そう言い2人をそこから連れ出し、馬車に乗せ王宮に連れて行った。

馬車に揺られながら窓の外を見ると、見たことがない景色が広がっていた。
ただ、馬車は乗り心地は悪かった。
「遊園地のアトラクションみたいだな。」
「そうね。お尻が痛いわ。」

王宮に着き国王夫妻に謁見した。
2人を国王夫妻は大変気に入りしばらく王宮に住まわせる事にした。

この世界では魔法が使える。
ただ、それは一部の者だけであった。
一般の移動手段は馬や馬車などだった。
農業は行われていたが、機械などないので人や馬を使い畑を耕していた。
そして、食べる物は焼いたり煮たりをして、味付けは塩や辛い香辛料だけの物だった。

国王は「ぢ」だった。
もう、あのガタガタと揺れるお尻が痛い馬車に乗りたくない。いつも塩味や辛味の食事も「ぢ」には良くないし。美味しいと思える物がなかった。
この状況をなんとかしたい国王は考えた末に異世界からなんとかしてくれそうなも者を召喚をすることにした。
神殿の神官に相談をして選ばれたのはこの夫婦だった。

召喚された父はエンジニアの知識をこの国で発揮した。まずは国王の馬車の揺れを無くす改造をした。
そして母は料理研究家として、料理の腕を振るい、新しい料理を広めた。
砂糖、酢、醤油、味噌などの調味料を作った。
2人は自身の才能を使い国の発展に貢献した。
そして、だんだんと国王の「ぢ」はよくなっていった。

しかし、夫婦は時折り子供達のことを思い出しては2人で涙を流すこともあった。

そして1年が過ぎる頃、国王に「この国の発展に尽力をしてくれて感謝する」
(国王の「ぢ」の回復のために)
「何か望みはないか?」と2人に尋ねた。

華恵は「あっちに残してきた子供達が心配です。」と涙ながらに答えた。
翔太郎は「できれば戻りたいです。」そう答えた。

国王は「召喚した者はもどせないんじゃ。すまんのう。」と眉毛を下げて困ってしまった。
后妃は「じゃあ、子供達をこちらに召喚したらどう?こちらで一緒に暮らしたらいいじゃない?ねぇーあなた。」
「そうじゃのう。」(まだ、「ぢ」が完治してないし)

華恵は「呼び出すのはいいですが5人いるのですけど…。」
「えっ5人も??」国王と后妃は口を揃えてそう言った。
「はい。5人。」翔太郎と華恵は顔を赤くして答えた。
「そうは見えないわねー。その美貌の秘訣はなに?」なんて后妃たちが話をしてる間に
国王は2人を召喚した神官に5人の子供の召喚を頼んだ。

神官は「うーん5人ですかー?いっぺんには難しいかもしれませんねー。5人がまとまっていればいいですけどー。召喚術は一年に一度しかできないんですよー。まとまっていなければ数年をかけてやることになりますねー。それでいいですかね?」
華恵は「全員一緒になんとかお願いします。」
「そーですかータイミングをみて頑張ってやってみますねー」と神官が言った。
あまりにも軽い感じの神官にこの人って?と翔太郎は思った。

そしていいタイミングで5人の召喚を行ったということで最初の話にもどる。