「ええっと、普段は、青みがかった黄緑色です‥‥‥‥‥」


「へぇ、そうなんだ」


「うれしいときは、桜の花びらみたいな、薄いピンク色です」


「へぇー、感情で変わるんだ‥‥‥‥」

じゃあ、おれもお嬢に嘘吐けないじゃん、なんて笑って言う。



「どんな色?」って聞かれたのが初めてで、
ちょっと緊張したけど。

こういう話をしても、嫌な表情(かお)も感情も持たずに聞いてくれるのは、すごくありがたい。





「でも、泉君はすごくうれしいときしか、この色は見れないみたいですね‥‥‥‥‥‥‥」

すごくきれいなのに、いつもポジティブなこと言ってるときには見えないから。



「そうなの?」

人によって違うんだなー、なんて言いながら、
「おだんご!!」って弟君が持ってきた雪玉を受け取っている。



「面倒見いいんですね」

うれしそうに、また雪景色に戻っていく弟君を見送る。



「そうか?そうでもねーぞ」


「学校では、あんまり見ないので‥‥‥‥」


ちょっとうらやましい、って言ったら、
「面倒なだけだけどな」なんて笑って返してくる。




「‥‥‥‥?」

ふと、椅子に置いてある鞄の中から、
なにかのケースがはみ出ているのを見つける。



「それ、弟へのプレゼント」


「そうなんですか?」学校では誰にもあげないって言ってたけど。


「そんな大きいやつは買ってあげられねーから、小さいのだけど」

また、薄桜色が広がっていく。