「____お願いします、お嬢様っっ!!」

パンっ!と手を合わせてくる。



お嬢様‥‥‥‥‥‥。


その呼び方はダメだって、と泉君が焦っている。





「____いいですよ」

別に今さら、気にしてない。





教科書を渡すと、早速2人でページをめくっている。

教科書がないと分からないところがあるから、仕方ない。





「これ、全然埋まってなくてさ」桜庭君が戻ってきて、私の隣に座る。

いつのまにか、机が4つかたまっていたことに気づく。



「あー、それ、埋まんないよねー」彼の政治経済のノートを見て、麻美さんが言う。

パラパラとページがめくれるたび、水色がにじんで消えていく。



「西やんの授業、なに言ってるか分かんなくて眠くなるもん‥‥‥‥」


そうかな‥‥‥‥?



政治経済の西山先生は、きれいな紺碧色(こんあおいろ)の声の人だ。


私はあの色、好きだけど。

みんなは眠くなるのかな。


きれいな色なのに、もったいない。