「あの‥‥‥‥」


「「ん?」」私が話しかけると、言い合っていた2人がこっちを向く。







「なんで私、"お嬢"なんでしょうか‥‥‥‥?」





空気が、重くなったような気がする。










「え、みんな言ってるよね?
しののめさんが静かであんまりしゃべらないし、敬語だし‥‥‥‥」


「おい、んな風に言うなって____」


「あいたっ!?」頭にゲンコツを喰らった麻美さんが涙目になる。





____やっぱり。そうなんだ。





「でっ、でもねっ!?みんな話したいと思ってて____」手振りまでつけて説明してくれる。


「大丈夫です」


「えっ?」


「分かって、ましたから‥‥‥‥」




____そんなわけはないのだと。


改めて(わか)ってしまうと、どうにもいたたまれなくなる。







「すみません、先生に呼ばれてたの、忘れてました」



そう言って。

食べ終えた食器を片付けて、食堂から逃げた。
 







____逃げた。


私は逃げた。現実から。








____。



きい、と木製の扉の赤紫色の声が視界でにじんだ。

中を見ると、今日は珍しく、誰もいなかった。