心配だったけど、注文を終えて戻ったときにはもう席が確保されていた。

お礼を言いつつ席に座ると、麻美さんが「それなに?」と声をかけてくる。



「うどんです」



中身を覗き込んで、「奏と一緒だ!!」と言われてしまって、ちょっと恥ずかしくなる。

同じものを頼んでいたとは思わなかった。




「____あ、シノもそれにしたんだ」


「目当てのが売り切れで‥‥‥」今日はお味噌汁の気分だったから、定食が良かったんだけど。



ふと、視界の端にあるお弁当に目が留まる。

お弁当に入ったおにぎりが、パンダになっていた。かわいい。

____しかもそれを、泉君が無言で食べている。







「わ、なにそれ」すごい!!と桜庭君のはちみつ色がにじむ。


「弟のやつと同じのにされた」

言いながら、一口でパンダおにぎりを平らげる。

ちょっとかわいそう‥‥‥‥。




「いずみんのとこ、いつもキャラ弁だもんね」


今日は気合入ってるんだねぇ、とオレンジ色の声で眺めている。

____彼女はというと、2,3人分はありそうなお弁当をすごい速さで食べ進めていた。

麻美さんの胃袋はどうなっているのだろうか。





「今日は、弟が遠足らしくて」


「いい天気ですもんね」今日は珍しく晴れている。気温は相変わらずだけど。


「どうせ、保育園の裏の公園なんだろうけどな」と言いつつ、1番最初に食べ終えた。


「いいよな、子供はさ。単純なことで喜べて‥‥‥‥」


「なにいきなり不幸感出してんの」


「やあ、なんかさー。もう単純なことで喜べないっつーか‥‥‥‥」


「いずみん、おじいちゃんみたいだよ?」


「だってひまそーじゃん。好きなことしてても怒られないし‥‥‥‥」


「ああ、なんかわかる」


「だろー。おれもう無理。しんどい帰りたいー」



ここで寝ないでよー、と麻美さんがフラフラし始めた泉君の肩を叩いている。